真珠道は続く。
Store Info
- 店名仲庭
- 住所大阪市中央区心斎橋筋2-3-27
- 電話番号06-6211-8686
- AREA
- 7
- EAST
たどり着けない、真珠の真価
「真珠は、どれが似合うか?どれが好きか?持ち主の満足と納得が一番大切なんですよ」と禅問答のような回答をいただいた2017年の6月の当取材。「仲庭」さんはその歴史を1891年に遡る、老舗も老舗、ほんまもんのジュエリー専門店。3年前のあの日はたどり着けなかった、その答え合わせのため、3年の歳月を経て、ワタクシまたこの門戸をたたいたワケです。先に結論書きますが、またも玉砕!真珠の世界はほんっと奥深い!!
先述の通り、創業は1891年と伝えられ、明治の頃は着物やかんざしや帯締め、そして万年筆や時計やジュエリーを国外へも通信販売(!?)されていたという生粋、ホンモン、伝統の一軒、「仲庭」さん。今日も4代目の仲庭さんが店内におられます。そしてまたあの日のように「真珠の真価が知りたいのです」と申し出たところ…目の前にダイアモンドと金の延べ棒が置かれました。
そもそも、宝石というものの本質に触れてみては?と話す仲庭様。「宝石とは何か」その問いに面食らうワタクシです。例えば、左のダイアモンドと同価値の金を右に並べようとすれば、金の体積はこの量では済まない。国勢が安定しない古代の頃、すぐにでも逃げ出さなければ命が危ぶまれるときに、所持しやすいのはダイアモンドと金のどちらか?そう、答えはダイアモンド、すなわち宝石なのです。
この逸話に出てくるキーワード「金塊」「宝石」「生命」にまず驚愕です。この3つ、決して決して、同じ価値でトレードすることはできません。間に「貨幣」が入ることでかろうじて「交換ができる」くらいのこと。しかも「生命」はもちろん安易にトレードはできない。むむむむ、やはり一筋縄ではいかない、仲庭問答!!
そもそも真珠は、6mmサイズだから○○円、長さがあるから○○円、どこどこ産だから○○円、とは決して一概に言えない…記号化の困難な宝石。だからその価値は「自分」の中に見出すものと、前回も教えてくださった仲庭さん。とはいえですよ、「良いものは高い」これが世の常じゃないですか。その「良いもの」が知りたいんです!と、3年前と同じドツボにはまるワタクシ。そこで仲庭さんは…
おもむろに世界地図を広げます。世界には西洋で獲れる真珠、日本の伊勢志摩・愛媛・五島列島などで獲れる真珠があるのだと話してくれます。知ってます、日本のアコヤ貝から採取できる真珠は世界でも高い評価を得ているんですよね?勢い込むワタクシに仲庭さんが見せてくれたのは…
南洋の黒真珠と白蝶真珠。真ん中に置かれるのがアコヤ真珠。「どれを美しいと思うのかは、世界の高い評価は関係なく、自分で決めていいんです」と、またもニッコリと禅問答。ここでワタクシも観念しました。「わたしにはえらべない」ことを自覚したのです。
そこで「なぜえらべないのか」を自問してみた。要は「価格の比較」ができないから、なのです。つまり、ワタクシは、貨幣に換算される数値でしか、ものをみることができない、、、長く生きてきて、こんな自分を知ることになるとは…なんて得難い機会なんだろう。。情けないけれど。。
少々落ち込み気味なワタクシに仲庭さんはニッコリと「アコヤ真珠はどうですか?」と聞いてくれます。ここでワタクシは初めて、ほんとうに初めて、アコヤ真珠を真剣に注視してみました。驚きました。キレイとか美しいとか、そおいう言葉を超えるような存在感。ピンクの光沢を放ちながら白く白く輝く一粒。鉱物にはない生命力を感じる「赤」の光沢。これはかつて生きていたもの、生命を宿していたものと、深く実感するのです。そこで振り返る、最初の「金塊」「宝石」「生命」の例え話。もしかして、あの話にも関連するのかしら??
そこで仲庭さんはまた世界地図に戻り話してくれます。「このアコヤ貝の真珠は、地球上でも日本でしか獲ることはできないんです。不思議ですね。このピンクを帯びた輝きは、なぜか日本だけ。しかも、東京より下の近海にだけ。僕には神さんが創った奇跡に思える。生命の神秘としか言いようがない」と。
そう、仲庭さんだからこそ言えること。真珠を前に「値付ける」ことは(仮)の行為、トレード記号にすぎないということ。本質的な真価は、選ぶ人と選ばれる真珠の間に確立するのだと。
「生命」は安易にトレードはできないとは、その意味だったのか。。。
答えが見えかけたワタクシに「ご自身の手に真珠を置いてごらんなさい」と話す仲庭さん。「どれが自分にとって美しいのか?は、自分で決めていいんですよ」ともう一度。そう、自分で決めていいんです。でも、デタラメな値でトレードされないように、真価を守るため、世に仲庭さんのような専門家がいらっしゃる、ということなのだと、改めて気づくのです。
例え、最終的に同じ真珠にたどり着いたとしても。そのアクセス方法が「大きさ」「産地」「価格」といった記号だけなのか、それとも「ハッ」と捉われたインスピレーションなのか。そのプロセスによって、その真珠を身に着ける私を豊かにも貧しくも左右する。だから仲庭さんは何度も言うんです「自分の感性で決めなさい」と。
そういうことなんですよね?なんて仲庭さんに聞いても「ふふふふ」と笑うのみ。「デザインものも美しいでしょ?」と、アコヤ真珠・白蝶真珠・黒真珠のデザインネックレスを見せてくれ、煙にまかれるワタクシです。うーーーん、デザインネックレスとなるとやはり黒真珠が美しいなぁ…と新たな発見がまた!!!
そうなんです。ずっと真珠単体の話で進んできましたが、こんな風に華奢な金との相性も抜群。
一粒ネックレスもエレガントですね。
真珠を見に来て「内観」をして帰る。またも「自分で」選ぶにはほど遠いワタクシなのでした。そんなワタクシに「また、見にいらっしゃい」と仲庭さんはニッコリ。いつか、自分の目で自分にとっての真価ある1点を選べる日が来るのかしら。先は長い、ほんとうに長すぎる。日々の生き方、その積み重ね…真珠道はまだまだ続くのです。
- 価格は店頭でご確認ください。