宇治香園 日本茶喫茶
喧騒を忘れて。
賑やかで目まぐるしい心斎橋の中に存在する静寂のスポット。喧騒を忘れて、ただただ目前の一杯に心落ち着ける場所。それが宇治香園の日本茶喫茶。慶應元年(1865年)創業の京都のお茶の老舗「宇治香園」の奥にひっそりと佇む、隠れ家のようなスペースです。
陰影と質感の美学、詫び寂びの世界観。などと、どれだけ言葉を尽くしてもこの空気感は伝わらない。ざわざわとした心の底からゆっくりと静寂を浸透させるような、そんな空間です。
大判の一枚板カウンターは胡桃の木。まずはゆっくりと腰を落ち着けて、お品書きを眺めます。目前には・・・
歳月を経て大切に使われてきた茶釜。こちらにジンワリと熱を伝道してくるかのような存在感。
本日は「煎茶 清風」をいただきます。常滑(とこなめ)の急須をスッと配置し、茶筒をあけるとフワリと爽やかな薫香が立ち昇り・・・
茶釜から、まずは茶碗へ湯を注いでしばし静止。この間に湯は茶碗を温め、茶碗は湯を最適な温度へと落ち着かせます。この所作のひとつひとつに意味があり、その意味を慈しむように丁寧に動く手元。
まるで、スローモーション、もしくはコマ割りのように、一瞬一瞬が止まっていながら、流麗に進む動作。その動作の緩急も、見る側の心を落ち着かせるような、そんなワンシーンなのです。
茶碗から急須へ。注ぐ掌に、温度や湿度を感じ取っているかのような五感の仕事。店長の射るような目線も急須の中へと注がれます。
ゆっくりと茶葉が開くのを待つこと1分弱。茶碗の温度も同時に確認しながら、一杯の精度を高めるひと時。
いよいよ茶碗へ茶を淹れる瞬間。始めはゆっくりと。次第に強弱をつけ、跳ねるように急須を動かすお手元。この動きを眺めるだけで、心地のよい緊張が味わえます。
最後の一滴まで。素材と技の演算に息をするのも忘れるほど。
掌に納まる、まるで緑の小宇宙。温度と香りと目を捉えて離さないグリーン。淹れていただいた全ての工程を眺めていたからこそ、少しの波も立てないで口元に運びたくなる!
香りも味も温度も、すべて逃がさず味わいたい・・・そんな欲求が抑えられないと思った瞬間。口に含めば、頭は真っ白に。
味覚や嗅覚が瞬時に「煎茶 清風」に圧せられるような感覚!爽涼感や甘み、そして旨味や苦味。鼻孔を通り抜ける薫香にも痺れる、至福の一杯。そう、この味わいは、清風という素材と店長の技でもって、成立する唯一無二の一杯なのです。
二煎目からは自分で淹れて楽しみます。ポットから急須に湯を注ぎ、ひと呼吸おいてから湯呑に注ぎます。三煎目まで、味と香りの変化を感じながらゆったりと味わえます。
感想をありのままに書きますと、なんだか厳かな文章になってしまいました。ですが、慶應元年(1865年)創業の「宇治香園」さんの「お茶」へのスタンスは非常に親しみを生むもの。お品書きに書かれる「お茶は、もういちど家族が集まるきっかけ。子供がよくしゃべります。心があったかくなります。やさしくなります。」という文言が印象的。
そして、社是は「茶のこころを世につたえ よろこびの和をひろげます」と。味や香りを生むクオリティはもちろん、そこから生まれる和を大切にされています。
同店では急須で淹れるお茶講座「いちわん茶会」を定期開催しています。 17年前から続く当講座は、お茶を自分で淹れたことがない、初心者さんから、普段のお茶を、もっとおいしく淹れたいこだわり派まで、堅苦しい礼儀作法は抜きで、誰でも楽しんでいただけるお茶の淹れ方教室。店員8名、先着順なので・・・興味のある方は早めにお申し込みを!
-
煎茶 清風 648円
・お菓子付 950円
・アイスクリーム付 1080円 - ※価格は税込です。