心斎橋の老舗で ~かき氷さんぽ~ を堪能!
近年は王道やイノベーティブ、素材特化に回顧系、さらにはハイブリットなどなど、ここ20年でここまで探索と深化を遂げた和スィーツは他に「ない」。テイクアウトで30分は持たず、卓上に供されてもせいぜい10分の享楽。そして、目前で変容を遂げていく様。なんて儚くて、不安定で。同じく「期間限定」の桜や紅葉を愛でる日本人の心をガッチリと掴み続ける「かき氷」。今年も、やってきた。心斎橋のかき氷は2022年も変わらずにワタクシたちに「おいで、おいで」と手招いています。
宇治園(喫茶去)/回顧と素材特化。素材(茶)の名店が繰り出す幻の一椀
その歴史を1869年(明治2年)にさかのぼり、京都山城町の茶商がルーツの「宇治園」。2階には「喫茶去(きっさこ)」と銘打ったイートインスペースを設えます。老舗店とは思えないほど…いつも斬新で攻めた新商品をリリースする喫茶去。
昨年は「復刻版」方向に舵を向け、心斎橋人の感涙を誘った喫茶去。素材特化(茶)という得意技を封じ込め、食すゲストの「なつかしさ」に羅針盤を定めたその心意気たるや。ここ数年は平穏な気持ちで日常を過ごせなかった私たちに「あの頃」を想起させた回顧の一椀が…今年も進化しています。
そうです「宇治ミルク金時」は、純氷には既に甘味付き。たっぷり抹茶と国産小豆、トローリとした練乳にモチモチの白玉という、いわゆる往年の<全部乗せ>方向。素材特化のミニマルかき氷が先頭を走る近年において、、、むしろ逆を張るという意欲作。
で、ありながら、決して安易な昭和主義風の「やっちゃった、チープさ」なんかに甘んじない。供された瞬間の抹茶薫香は鮮烈極まりなく、綿菓子のようにふんわりとした純氷と白玉のテクスチャーコンビネーション。国産小倉はフクフクと炊きあがり、練乳の甘味が右脳を直撃。つまり、全エレメントがガッチリと調和。
今年はさらに手間を加え、昨年「2層」だった氷⇒抹茶の段々が…いきなり倍上がりの「4層」に!!事件です!これによりシロップによる氷のべちゃ付き感を軽減し、サクサクとした純氷の風合いを保つという……罪深いほどに贅沢な飛び道具的解決を放り込んでくる大胆さ。
抹茶の風味が強靭になった分、シロップを添加したときの感動ときたら・・・。スプーンで一気にすくって口に含めば、味覚が思い出をたどって…かつての遠い感覚、刻み込まれた味覚の記憶にめぐり合わせてくれる。ノスタルジックに泣かせてくれる復刻版!
次は「黒みつきなこ氷」。たっぷりと振りかけるのは、丹波の黒豆きな粉、芭蕉堂のわらび餅や黒光りする黒豆に黒みつ。そう、小さいころ祖母の家で味わった「わらび餅」を1度解体して<かき氷>として再構築したかのようなガストロノミィ的一椀。
とはいえ、涙の回顧に終始しないのが非常にクセ者!!黒豆きな粉がワンワンと発する強固な香ばしさは、何かビターな記憶、置いてきた懐かしさを根底から揺るがす「危険さ!」も秘めて♡感動系でも感涙系でもなく、モンスター級の味わいを覚悟して!
もはや狂暴レベルに上品な黒みつ。黒豆すら1本のシワも見せずに隙が無い!これだ、これが「宇治園」クオリティなのだ!!!そう思ったら…まだまだ理解は浅い、なんと真打ちは「わらび餅」だったのです。
用いるのは芭蕉堂の逸品。舌に吸い付くかのような粘着モッチリは、ひとつずつ丁寧に湯通しを施した賜物!ヒンヤリ純氷とモッチリわらび餅のコンビネーションは類稀なるお見事さ。氷内からも出るわ出るわの「わらび餅」で、昨年よりもボリュームがアップ。
そう、昨年よりも明らかに「人の手」がかかっている、それが宇治園のかき氷。「昨年よりもブラッシュアップするは当然として、何にブラッシュアップをかけるのか?が課題です」と話す伊藤店長様。素材のアップだけじゃなく、「人の手」をかけて新しい味わいを届けることが大切だと教えてくれました。
銀装(カフェ・ラ・サール)/純氷との調和。喫茶かき氷の最前線×到達点
1952年創業、その歴史を70年刻むカステラ専門店「銀装」。その2階には昭和55年から…心斎橋の紳士淑女がお買い物の休憩に立ち寄った「カフェ・ラ・サール」があります。
アーチ窓から見下ろす商店街の街並みに、目前には大丸心斎橋店。ドレープ豊かなカーテンやレンガ造りの壁面に、フランス画壇の巨匠・カシニョールが飾られる古き良き心斎橋の社交場。このワンフロアだけ時が止まったかのような…特別な場所。そんなロケーションで供されるかき氷は「フラッペ」と銘打って。そう、その名の通り…喫茶で味わうかき氷をどこまでも高みへと追及した逸品が待っています。
まずは「マンゴーフラッペ」。供された瞬間に目を釘付けとする南国イエロー。そしてアイスクリームの純白がバイカラーのコンビネーション。シンプルでミニマム、それでいて…漂ってくるマンゴーの甘い薫香が強烈に魅惑的。これは、ただの喫茶店かき氷とは一線を画す予感!
その予感は的中した!スプーンで探ってゆくほどに…豊かなマンゴー果肉がとりとめもなく。その一片一片がブリンブリンにしっかりと弾力を秘めている。クリアな純氷を染め上げるほどのボリュームで、なにか…こう…悪いことをしているみたいな背徳感すら覚えてしまうほどの贅沢さ。
ここで、ハタと我に返されるのが「アングレーズソース」。その名の通り、カスタードをベースとしたイギリスのスィーツソースが喫茶のかき氷へと舵を切る!!この妙味、このミルク感をもってこそ、純氷が洋スィーツとして昇華する瞬間なのです。
さらに特筆したいのが「アイスクリーム」。これがアングレースソース以上に鮮烈なインパクト。近年なかなかその辺のカフェではお目にかかれないほどの高糖度&濃厚さ!!!クリアな純氷をベースに、マンゴー果肉×アングレースソース×アイスクリームがそれぞれに強く主張しながら対峙しながら、重層的な一杯を奏でています。
次は「宇治抹茶フラッペ」。見てください、この見事なまでのシマシマ模様。抹茶と練乳が段々に折り重なる高密度。練乳を受けてもなお「ピン」と結晶を伸ばす純氷に、氷の高クオリティが見て取れる!グリーン×ホワイトの美しさにしばしウットリ♡
卓上に供された瞬間から右脳を直撃する香りは…堺の銘茶『つぼ市製茶』の宇治抹茶。口に含めば、清澄な旨味とほのかな苦味が鮮烈に!!!これだけ強い抹茶の主張で、甘味の強固な練乳との相性は…もう言語化不可能です、いや、マイリマシタ。
北海道十勝産の小豆はトローーーリとこし餡風味。練乳とはまた違ったアプローチで宇治抹茶の風合いを際立たせて。この小豆が実にお見事で、宇治抹茶や練乳に、バニラアイスやベースとなる純氷をも繋ぐ、狡猾な名わき役。もっと、もっと、この小豆を味わいたい!
と、思ったら・・・中からなんと小豆の宝がザックザックと掘り起こされました♡こんな嬉しすぎる驚きに思わず「うそっーーーーーーーーーーー!!!!!」と大声が出そうになりますが、抑えて、抑えて。静かな空間を美味でもって堪能するカフェ・ラ・サールでは、皆様が落ち着きながら、でも表情は満面の笑みで、いい時間を過ごしていますから。。
住所:大阪市中央区心斎橋筋1-4-20
電話:06-6252-7800
URL:https://www.uji-en.co.jp
宇治ミルク金時(あずき・練乳・白玉)/1,210円
宇治ミルク金時アイス(あずき・抹茶アイス・練乳・白玉)/1,320円
黒みつきなこ氷/ 1,320円
■銀装
住所:大阪市中央区心斎橋筋1-4-24
電話番号:06-6245-0021
URL:http://www.ginso.co.jp
マンゴーフラッペ/880円
宇治抹茶フラッペ/880円
※価格はすべて税込
※期間限定商品です。