気品漂う、さんまの世界
あの、老舗名店の期間限定メニュー
文政12年創業。口の肥えた心斎橋人たちに珠玉の一貫を供し続ける「本福寿司」。幕末のグルメガイド「花の下影」(今でいうミシュラン的な!?)にも掲載された記録のある、由緒あるお寿司屋さんです。瀬戸内でとれた天然の小鯛やエビ、穴子などの新鮮な材料を独特の木型で押した箱寿司は、大阪府の「大阪産(おおさかもん)認定品」。旬の鮮魚がズラリとならぶネタケースに、あの!逸品がやってきたとのことで、さっそくお邪魔してまいりました。
お馴染み、大和店長が手にするのは、旬が始まる「さんま」です。今年は海水の温度が上がり、“走り“がちょっと遅め。大和店長もハラハラとしながら水揚げ速報を待っていたのだとか。そして、脂の乗った逸品が届いたのが8月の末。まさに”走り”のさんまはピカピカと青光りを放つのです。大阪に入るさんまのほとんどが、北は北海道、南は和歌山まで。北から泳ぎ続けて和歌山にたどり着くさんまは、脂が落ちてしまうのだとか。なので、ここ「本福寿司」で用いるさんまは、北海道産に厳選しているそう。よーく脂の乗ったものだけを使用しているのです。
そんな選り抜きのさんまを昆布締めにするのが「本福寿司」流。上方料理と昆布は切っても切れない間柄。北海道産のさんまと道南産の昆布が、大阪伝統の技法でどんな風合いに仕上がるのか…。期待が高まります!
カウンターに運ばれた昆布締めさんまは、さっそくまな板の上へ。熟練の職人さんが、薄皮を丁寧に剥いでゆきます。細やかな“見えない”仕事。こんな丁寧な下処理が食感や味覚を一層高めてゆくのですね。恐れ入ります。
そして、これまた丁寧な骨切りも鮮やかに!大和店長は言います。「寿司ネタの中でも光モノは一番デリケート。手や包丁、まな板に触れる時間は極力短縮する。特に昆布締めさんまは風合いが命。早くて確かな仕事が要」。その言葉通りに包丁先を指先のごとく操る円熟技にはしばし見入ってしまうのです。
骨切りの完了した昆布締めさんまには、ねぎと生姜を少々。匂い消しというより、味覚のアクセントとして活躍しそうなあしらいです。ここからは、連続で画像をお楽しみください!
シャリを棒状に整える、一連の工程。この間わずか30秒!!!!いつも口にほうばっている、棒寿司は、こうやって模られていたんですね。それにしても、職人さんの手がキレイすぎます。
さらに、上からのせるのは白板昆布。こちらも道南産の逸品なのです。酢の強味を優しく調和する、まさに押し寿司文化・大阪の知恵。この一枚…味わいにどう左右するのか。実食がますます楽しみになってきました!
さあ、フィニッシュです。取り出しました寿司切り包丁は黒檀の一本。サクッサクッと棒寿司を一貫へと切り分けてゆきます。
「お待たせしました」目前に出される昆布締めさんまのお寿司は、握りと棒寿司。食べ比べも楽しみな、一枚盛り合わせ。秋が来ましたよ~♪
まずは握りからいきましょう。さんま特有の匂いは昆布で抑えられ、かつ脂の旨味がギュッと広がります。ネタとシャリの一体感もお見事!口中でハラリと解けるシャリからは、米の甘みと酸味が立ち、さんまの滋味がグングンと高まります。あーーーー素晴らしい!と、思いきや、棒寿司はもっと凄かった!これまで、こんな上品なさんまの味わい方があったのか!?と驚愕するほどの逸品です。
この一貫に比べたら、先ほどいただいた握りはまだ野趣深い趣向。棒寿司の方は、さんまが持つ滋味や芳醇さを削り取って、核の旨味だけを際立たせたかのような麗しさ♪シャリと白板昆布がさんまと混然一体となるひと口は、輪郭明瞭でいてど真ん中は細やかな味覚のグラデーション!力ある握りと、瀟洒な棒寿司。できるならば、どちらも味わって欲しい!と感じる一皿でした。大和店長、ありがとうございました!
- さんま棒寿司(8切れ) ¥900
- さんま握り(6貫) ¥900
- ※全て税込み価格
- ※8月末~10月頭までの期間限定商品となります。