2020.10.20

スイーツで歴史の生き証人になった件。

512 CAFE&GRILLとは??

ご存じの方もそうでない方も。512 CAFE&GRILLといえば東京は港区の赤坂にあるカフェの神話的名店。なにゆえ神話的かと言えば、そのコンセプトを“セレクトカフェ”としている点。国内・海外の作り手が真摯に手をかけた素晴らしい素材を、ひとつのメニューに集約。四季すらもスイーツに映し出す流麗さ。クリエイターたちとコラボする意欲的メニューなどなど。客人と素材を創意で結びつける…ひとつのコミュニティのようなハブのような役割を果たしているのです。

512CAFE&SWEETSが心斎橋にオープン

いま、ワタクシは大阪は心斎橋におります。この方は「宇内さん」。なんと、あの512 CAFE&GRILLでスイーツメニュー開発を指揮してきた…あの宇内さんなんです。知る人ぞ知る、スイーツ界の傑物がなぜなぜなぜ、心斎橋にいるのかというと・・・

2020年7月16日。満を持して「512CAFE&SWEETS」が心斎橋にオープンしたのです。これが関西スイーツマニアたちの台風の目!!!なんせ、1度は味わってみたいと東京まで通っていたファンもいるくらいの名店が、大阪にやってきたのですから!

緑に囲まれた自然あふれるロケーションが東京・赤坂店の魅力。それを引き継ぐように…一面のガラス窓から陽光が注ぐロケーション。

高い天井からは緑が下がり、奥行きと高さを「緑」で視点ポイントにする空間づくり。

ショーケースに並ぶカヌレやプリン。本日は…同ショップを代表する「あれ」と「あれ」を同時にご紹介!

ザクザクフレンチトースト

まずはコチラ「ザクザクフレンチトースト」。これは東京・赤坂店でも絶大なる人気を誇る…名作中の名作と言えるでしょう。フレンチトーストは2枚、3色のメイプルシロップに、バニラアイスはミントを添えて。手をかざすと…熱々のフレンチトーストの熱、アイスの冷たさ、そして立ち昇る3種のメイプルシロップの香り。密度の高い構成です。

いまだかつてこんなヴィジュアルのフレンチトーストを見たことがあったでしょうか。ゴロゴロと表面を覆う、この形状。

ナイフを入れると…なんて硬い表面。そこを過ぎれば、ニュッとナイフが進む。表面と内部の感触が「まるで逆」。24時間以上漬け込むアパレイユは“特別な卵”を使用。パンはなんとデニッシュパン。表面に散りばめられるのは、クルトンと玄米フレーク。

ひと口いただくと…“ザクザク”どころかバリンバリンな強テクスチャー。上下の歯で文字通り噛み砕き進めると、面白い!デニッシュパンのバター薫香がドンドンと鼻孔を抜けてゆく!トロリとろける内部からは、アパレイユの柔らかな甘み。顎の振動を中心に、熱や香りや食感や甘味が口内でグラデーションを広げていく妙味!!

ゴールデン・アンバー・ダークと3種の熟成が並ぶメイプルシロップを注げば、さらに味わいは変化して。また、バニラアイス、その下のクリームと、冷温の緩急も練り込まれ。バリバリのテクスチャーが生む、「味わう事の深遠さ」が、こんなにも奥深く、かつ、歓喜あふれるものであることを五感で実感できます。まさに、一生に一度は味わいたい名作!

かつて飲食店メニュー開発をしていたワタクシ。あらゆるメニューは「とにかく柔らかく」がセオリーなんです。歯ごたえに意識を向けさせなければ、脳は真っ直ぐに味へとたどり着く。それが直感的な「美味しい」を印象付ける。 「ザクザクフレンチトースト」はその真逆を正々堂々と張ってくる。ほんとうに正々堂々と!これは食べ手(お客さん)への信頼(必ず、きちんと味わってくれる)が根底になければ成しえない。なんてメニューなんだろう!!!!

このメニューを生み出した宇内さんはパティシエ歴約10年。ケーキの世界からカフェスイーツの世界へ。「同じ甘味でも双方で求められるものがまるで違うと最初は戸惑いました」と話します。ところが、そこからが宇内さんの面白い所。「だったら、カフェで求められる味と味わいをとことん追求したくなって」そして邁進。会話の合間の甘味が役割だったカフェスイーツに、美味しくも美しい…コンセプチャルな一石を投じて、ほんとうにたくさんのお客様の歓喜を生んだわけです。カフェスイーツの立ち位置を変えた…といっても過言ではないほどに。

そんな宇内さんが心斎橋を舞台とした今。持ち前のフットワークの軽さや柔軟な思考、挑み続ける姿勢で、アルバイトの女性スタッフや近隣のお店の方々からも真摯にヒアリングを重ねています。大阪・心斎橋で求められるカフェスイーツと自身が生み出すカフェスイーツの“折り合う着地点”を虎視眈々と見極めているのです。

ブリュレパンケーキ

次は「ブリュレパンケーキ」。これも同店の名作中の名作、でありながら…なんと本日は作る工程も撮影許可を頂いてしまいましたぁぁぁぁぁ!!!!結論から書きます。このメニューはまさに「セレクトカフェ」を代表する1品。同店のテーマを一身に引き受ける傑作なんです。

注文が入ってから立てる卵白。卵は兵庫県は丹波産。味の濃い卵が支持される昨今の流れに逆らうかのごとく、淡白で端正な味の卵を厳選。生地やクリームやソースと構成したときに、全素材の“持ち味”が調和することに重きを置く、パティシエ宇内さんならではのこだわりなんです。

粉類は自家製ブレンド。配合も素材ももちろん社外秘。鉄板に乗せてゆっくりと加熱が始まります。なんとこの鉄板は東京本店からわざわざ運んできた1機。なぜなら、この鉄板の熱伝導のクセを知り尽くした宇内さんにとって、決して替わりのきかない相棒だから。そのくらい、このブリュレパンケーキが繊細で、高度な加熱技術を要する、とんでもないメニューだということの証。

射るような目で生地を凝視する宇内さん。その日の温度や湿度、さらには卵の状態などを鑑み…無数の取捨選択から「いま、最もベストな、加熱温度と焼き時間」を逆算していくまさに妙技。機械やAIでは再現できない、まさに「人の手の仕事」。

生地を返して掌で確認する温度。ワタクシもカメラマンも、息をするのもためらわれるほどの緊張感。宇内さんは、両の腕以外に微動だにすることもなく、蒸し焼かれる生地と対峙。

ここで盛り付けの準備が始まります。糖の添加を一切しないベリーソースは自家製。バニラアイスはクリームを土台にして「溶けにくく」といった配慮も。

さらには、きび糖を使った自家製カスタードクリームも。この後の怒涛の展開に向けて…準備万端。それでは盛り付けて行きましょうっ♪スタート!!

たっぷりと乗せられる自家製カスタードクリーム。そして真ん中の1枚にきび糖を注ぎ・・・

バナーで一気に過熱!!!!!!!

3枚の生地を重ねて完成♡

そっとナイフを入れてみる。シブースト状態の表面はかなり硬い!まず、この時点で「ハラッ」としてくる。いいのかな?これ以上力込めてナイフ入れちゃってもいいのかな?フルフルに震えるほど繊細な生地なのに、グサッて行っていいのかな?不安を募らせながらナイフをいれると———

「ドロォ~~」って。もう、ほんまに鬼ほど「ドロォ~~」って!思わず「あぁっ」って声が漏れて、目前の事態に一瞬頭が真っ白に!

決壊からとろけだすカスタードクリームに繊細極まる生地!美しく造形されたものを壊してしまうこの…なんとも言えないカンジはなんだろうと思ったら、思い出した、アレだ、小さいころすっごく綺麗なXmasケーキに母親が包丁を入れてくれた時のあのカンジ。キレイなものが崩れる瞬間の美しくも儚ないあのカンジ。なんて気分にさせてくれるパンケーキなんだ!

まるで俳句のような気分からの試食。突如!脳天を直撃するのは「焦げ味」。そうなんです、きび糖が焼かれ、焦げた味。そう、モノ(素材)が焼ければどう変容するのか?それをまっすぐに突き付けてくるような香りや強い香ばしさ。これが味わいの“スタート”だったんです。

卵白の味、粉の味、きび糖の味やベリーの味。それひとつとっても、単味では決してない、そんな素材が演算し、調和したかと思えば対峙もして。このメニューが魅せてくるのはまさに“素材感”。人の手の内に収まるもんかと主張するくらいの素材感、でありながら、ひとつのプレートに集約される妙味。

食べ始めのスタートから完食のゴールまで。味や食感に香りや温度が変化していく食べ心地は、まるで綿密に構成されたフレンチのよう。食べ手が主体的に新しい発見を見つけに行く、そんな仕掛けが細部にまで隠されたワンプレート。

これが宇内流のカフェスイーツ。あの神話的名店「512 CAFE&SWEETS」が世に放った、新しいカフェスイーツの存在感!どうでしょうか、この宇内さんの手腕は今年の心斎橋、いえいえ、関西のスイーツの台風の目となること間違いなし。歴史の生き証人となるべく、スイーツマニアの皆様、是非ご来店を★

◇ザクザクフレンチトースト
1P 750円(テイクアウトにはアイスは付きません)
2P 1100円

ブリュレパンケーキ 1400円

※価格はすべて税別

店名:512CAFE&SWEETS
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-1-24 2階
TEL:06-6211-1512
URL:https://512.osaka/

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