創業150年 増田漆器店
来年のお正月こそ…!
元旦からピコンピコンと到着するInstagram。みんなすっごく綺麗なおせちをいただいていたようです。もちろんワタクシも購入したものと手作りの黒豆なんかを織り交ぜながら、新年の幕開けに相応しいおせちをこしらえたつもり。。なのに、にもかかわらず、どうも…見映えがしない。その原因が今年やっと判った。どんだけ鴨ロースがルビ色に仕上がろうが、田作りがまっすぐにピョンと伸びていようが、お重がカジュアルすぎる…これが問題だった!!
そうなんです。ワタクシ、お重はまったく盲点だった。「使いやすい」それだけ、ほんとにそれだけの理由でプラ製の四角い箱を使っていました。とはいえ、ド素人の自分は何をどう選んだらいいのかワカラナイ。そこでやってきたのが増田漆器店さん。敷居が高そう~(怯)
1868年創業の増田漆器店。輪島塗(石川)や越前塗(福井)、山中塗(石川)や香川塗(香川)や会津塗(福島)に若狭塗(福井)などなど。全国の塗りの産地から「直で」商品を仕入れ。この「直で」がポイント。産地(職人さんたち)からの信頼の証とも言えるのです。
さてさて。だいぶハードルを上げてしまいましたが、店内ではニッコリとご店主がご対応くださいます。こんなド素人なワタクシにも、丁寧に商品のこと、漆器のこと、取り扱いのこと、ゆっくりと教えてくださいます。
例えばコチラの雑煮椀。照明を照り返すように煌めく存在感が圧巻。栃(とち)の材から切り出し、ろくろで椀型に整えた逸品。福井は越前塗の赤と黒のペアは、実は赤が男性用。意匠のまったくないデザインは、金や銀に朱や黒などの「家紋」を後に入れられるようにという計らい。なーーーんて、スルスルと書いていますが、全部親切なご店主様から教えていただいたこと。「ろくろってなんですか?栃(とち)ってなんですか?」そんなベーシックな質問にもニッコリと応えてくださるご店主!だから、ド素人なワタクシでもどんどんと興味関心が刺激されるんです。
そんな素人なワタクシにも、これだけは分かる。切り出して整えられた形がこんなにも美しい曲線になるなんて。このカーブの流麗さ、手のひらで包み持ち上げたくなるほどの親しみと相反するような厳かさ。なによりも、この発色。
もうひとつ、雑煮椀を見ていきましょう。こちらは福井は鯖江の木乾夫婦椀-さくら-。鯖江といえば…あの国内有数の眼鏡産地。技術の街から届いたこのペアには、やっぱり技巧が秘められているのです。粉砕した木材と樹脂を混ぜて象られる椀型。あしらわれるのは蒔絵(まきえ)。文字通り「桜」の絵が施されています。
金粉で描かれる可憐な桜。描くというより乗せる…という方が正しいかも。金粉が盛られた表面はわずかに立体に。漆黒を背景とした桜も、朱を背景とした桜も、とっても趣き深い。黙ってじっと眺めていたくなる、そんな逸品です。
ここで、改めて増田漆器店さんのご紹介。創業から150年。店内には心斎橋筋商店街の歴史も想わせるような当時の絵画や写真。
古い地図にも同店の屋号が残ります。当時から漆器の卸は通さず、直で産地(職人)と商いを続けてきた老舗店。産地とお客様、双方の信頼を請け負ってきた歴史と矜持。そして何より、上質な1点を選り抜く審美眼。それが増田漆器店。ではいよいよ、今回の目的であるお重を拝見。
どうでしょう、この重厚なスクエア。石川は輪島塗の六寸三段重。あまりにも塗りの精度が高く、周囲の景色を映し込んでしまうほど。存在感が段違いなのです。恐れ多いぃぃぃ~!!!!実は、ご店主がこちらのお重を勧めてくださったのには理由がありました。
それが、この唐子模様。唐子とは子どもの絵模様の事。子どもたちが凧や毬で遊ぶ様子が描かれます。このなんとも可愛らしいこと。金粉を使わず、色漆で描かれ、親しみやすいポップさを感じられます。そう、あの…ですね、あの重厚な松とか梅とか鶴とかじゃなくてですね、「遊ぶ子どもたち」の絵柄。
これは思わずニンマリとしてしまう!毎年の元旦の準備が楽しみになってしまう!ご店主の狙いはまさにソコ。「漆器は芸術品の側面もありますが、やはり実用品としても愛されて欲しい」とのお言葉。そうなんです、使う私たちが嬉しくなってしまう、それが漆器なんですね。
とはいえ、増田漆器店さんはやはり老舗。芸術品もこのように展示されています。こちらは香川漆芸の代表である蒟醤(きんま)の飾り皿。その歴史を室町に遡り、塗り重ねた漆に蒟醤剣で細やかな点線を彫り、彩漆を埋め込む技法。
当1点には銀彩が用いられ、鳳凰が3羽描かれるのです。直径は45cm、なのにもっともっと大きく目に映る。もちろん実用品じゃありません。その技術と描かれる世界観を眺め愉しむ一皿です。
椀やお重に飾り皿と見てきましたが、こちらにもご注目ください。お箸コーナーです。螺鈿(らでん)と呼ばれる貝の装飾を施したもの、シンプルに塗りの美しさを魅せるもの、お子様用や変わりデザインまで幅広く。このコーナーも見どころのひとつです。
創業150年。心斎橋筋商店街に佇む増田漆器店さんは、時代に合った用途を伝統の技法に乗せて、そして使う方の気持ちにも寄り添ってくださいます。来年の元旦こそはワタクシも素敵なお重におせちを盛り込んで、日本の美しさを目と舌で味わいたい♡
木乾 夫婦椀-さくら- 13,860円
輪島塗 三段重 六寸 童遊具 蒔絵 150,000円
飾り皿 銀彩 鳳凰 蒟醤 181,500円
※価格はすべて税込です。