串かつ だるま 心斎橋店
創業約90年
20年前のこと。現在、串かつ だるまで店長職を担う田益さんは、鳥取から大阪へとやってきました。そこで、初めて食べた大阪の串かつが「串かつ だるま」であったそう。口に含んだ瞬間に右脳を直撃する「旨い!」のインパクト、立ち動く店員さんたちや他のお客様の活気。「串かつ だるま」という業態に圧倒され、ここで働きたい、と願ったそう。約90年に渡って継承される、想いと文化。それを担う…という矜持を忍ばせる、そんな田益さんです。
そんな同店も新型コロナウィルスの影響で2020年4月7日に一時閉店を余儀なくされます。「これまでに経験したことのない事態、不安でしかたなかった」と話す田益さん。いつ収束するのかも分からない…毎日ニュースを眺めていた、と、当時の焦燥を振り返ります。
1人の女将さんが、労働者のために考案した…安価で美味しく満腹になるメニュー「串かつ」。同社の信条である「人が集うことで生まれる活気と、美味しいという声とともにこぼれる笑顔。それらがいくつも重なって社会全体にこだまし、街全体に明るい光を照らす」が、今後存続するのか?田益さんだけでなく、同社に関わる皆様が深く懸念されたことと思います。
とにかく、スタッフとお客様の安全を守ろう、と、stayhome期間を忍び、2020年5月16日に同店は再開。「待ってたで~!」と現れてくれたのは、串かつ だるま 心斎橋店の常連様たちでした。「お客様が戻ってきてくれた、従業員が元気で働けている、このことが本当に嬉しかった」と話す田益さん。
店頭にはアルコール除菌を設置し、
カウンター席には飛沫防止を設え、
アルコール除菌済のテーブルにはサインPOPを置き、客席にスペースを空けたご案内、数々の対策で「安心して、串かつを食べていただける」店内を作っています。
串かつ だるまは約90年以上の歴史があります。ですが、僕の中では20年前のあの時から、ご愛顧いただいているお客様たちにとっても、“それぞれの”年数と歴史と思い出が詰まっている、と話す田益さん。「この店の、皆様の中の歴史も、途絶えさすことはできないんです」と。店の歴史を止めてしまうことは、お客様の歴史も止めてしまうこと、と話してくれました。
だからこそ、思い切った施策を打ち立てます。あの「二度漬け禁止」のソースは個別のソースに。ご希望の方にはバット入りの以前の仕様で提供が可能(有料)。「以前の二度漬け禁止は今はありませんが、だるまの串かつソースは製造も味も、もちろん“門外不出の秘伝”もそのままです」と田益さんはニッコリ。
店内で召し上がることにまだ不安のある方には、テイクアウトメニューもあります。
もちろん、注文を受けてから揚げる“出来立て”でご提供。この日は筆者の知人が「だるまの禁断症状」のため、思いっきり購入。お店に来ることができない方にも美味しく味わって欲しい、そんな思いが込められています。
「こんな時だからこそ、変わらない味を皆様にご提供したい」と話す田益さん。ご自身が20年前に圧倒された美味しいのインパクトや、多くの方にとって馴染みと愛着のだるまの味を、より安全で安心な環境で味わっていただけるよう、今日も奮闘しています。