2022.05.24

TOKIA 「TEN TO SEN」開発物語 ~奇跡のような実話~

まるで、映画「タッカー」のような

インタビューをしながら手の平に汗がジンワリと滲んだのは久しぶりでした。ゼロから何かを創り/造り/作り出す…それはまるで、映画「タッカー」のような開発物語。どんな困難があろうが、どんな苦悩があろうが、自分が世に送り出したいものをローンチするまで絶対にあきらめない。そんな姿に賛同した人たちが応援を始めて、ムーブメントが起きてゆく。<開発>それ自体が誰かを刺激しずにはいられない、そんな現象が起きていたのです。

まずはご覧ください。左からグレーダイヤル、ブルーダイヤル、オールブラックダイヤル、ブラックダイヤル、ブルー ダイヤルと並ぶ5本。これは2022年2月1日に一般販売された日本製の腕時計「TEN TO SEN」。

心斎橋筋商店街で実物が見られるのは、ここ「時計倉庫TOKIA 心斎橋筋店」。そう、TOKIAといえば、アジア、​ヨーロッパ、アメリカなどから直輸入した輸入腕時計をラインナップするウォッチ専門店。輸入卸商社が直営する、国内最大級の品ぞろえのカジュアルウォッチ専門店です。ブランド系、アウトドア系、ミリタリー系、ドレス系などあらゆるスタイルを網羅し、常時約3000点のアイテムをズラリ。

先ほどの「「TEN TO SEN」」を開発した…それが、TOKIA。専門小売のショップがゼロベースで開発した腕時計が、いま、話題を集めているのです。なぜ、TOKIAが?なぜ、ゼロベースで?なぜ、リスクを取って?今回はそんな開発秘話に迫ります。

話は、2016年にまでさかのぼります。当時、2万円台のミニマムデザインの腕時計が流行を席巻。その背景には「高級時計への支持低迷」や「お財布が心もとない」「腕時計の価格でマウントし合うのは嫌だ」といった消費者動向があったことかと。腕時計へのモチベーションがある種の<守り>に入った、とも言えるでしょう。もっと砕けて言えば、多くの消費者が変に賢くなっちゃった。

結果、多くのファッションブランドが「2万円台シンプルウォッチ」をリリース。商品は画一化し、各ブランドのアイデンティティもよく見えない。このような動向を肌身で感じ取っていたのが、当のTOKIAで、実際にお客様に接するスタッフさんたちだったのです。TOKIAの有本さん(現:三宮店 店長)は、その頃を振り返り「なんと表現したらいいか…。寂しい状況だな、と感じました」と話します。

このままでは腕時計と人との間にあった、何かこう…価値や文化といったものが失われるといった危機感もあったことでしょう。そこで有本さんたちは決意します「ならば、自分たちで創ろう」と。ここで「“欲しい”の再定義」が興味深いのです。①時間を知る ②服の邪魔をしない ③着け心地がいい。この3つ、当たりまえのことが当たりまえに出来ることを前提に、奇をてらうことはせず高級素材を惜しみなく使う、そんな『時代に左右されない“究極の普通“』への挑戦が始まりました。

しかしながら…それは無理難題の連続。『日本製』であり『自動巻き』であり『5万円を切る』なんて、この3条件、まずもって設定が矛盾だらけではないか!!生産力に加えて知名度もデカい大企業「シチズン」や「セイコー」と同方向にコトを進め始めたこの時、「TEN TO SEN」開発メンバーは約6名。しかし、この6名が後にソレを成し遂げてしまう。この奇跡のような開発は実話!ほんとにあった、話なんです。

怒涛の試作はサンプル依頼と組み立て、そしてフィードバックの繰り返し。素材クオリティは絶対落とさないとばかりに「その他、コスト削減できる項目」を探し続けたそう。ここで掲げたのが「理想」であれば、妥協的コスト削減もあったかもしれません。しかし、「TEN TO SEN」チームが目指したのは理想ではなくあくまでも「現実的なゴール」 。だから、現実的なコスト削減を模索し続け、妥協は一切しない。その妥協知らずの試作工程が…マジでエグい(言葉乱れてスミマセン!!)。

例えば、この「龍頭」。上がってきたサンプルを自分たちの指先で確認し、高い操作性を維持するため何度もサイズを改善。

ラグの幅にも目を光らせ「着け心地」を快適とするために1mm単位の改善を施す。

白文字盤や黒文字盤は、文字の見やすさや高級感を求め、粗め粒子の塗装を何度も何度も改善。その他、ベルトのコマにはハーフコマも採用。ハーフコマなんて10万台腕時計の仕様じゃないですか…!

もちろん、ムーブメントも妥協知らず。シチズンのムーブメーカーから「ミヨタ 9015」を採用し、厚み10.7㎜の自動巻きという「着け心地×クオリティ」を一歩も譲らず。ケースは高級ステン316Lに、サファイアガラス(高硬度&透明度)も惜しみなく。。

ここまで注ぎ込み、売価は『5万円を切る』。ファンタジーでも、妄想でもない、the現実。それを適えたのは徹底したコスト削減で、①TOKIAを販路とすること ②装飾やBOXなどは必要最低限とすること ③組み立ては自社内の修理職人。これらのコスト削減で適えた『日本製』であり『自動巻き』であり『5万円を切る』プロダクト「TEN TO SEN」。

実は、この時点で当プロジェクトは「会社には内緒だった」と話す有本さん。水面下で動きながら、バレて反対される前に試作品を完成させるという時間との勝負でもあった。完成できたとしても反対されればローンチはできない、それでも、1人また1人と社内に賛同者が増えていく。協力を惜しまないメンバーが装飾BOXを運んだり、メインメンバーの通常業務を代わったりと、まさに点と点が線になっていく。

あと一歩、もう一歩のところで、当開発最大のトラブルが勃発。納品された「巻き芯」のサイズが合わず、急遽のカット加工が必要に。社内の組み立てスタッフを総動員しても間に合わない見通しが立ち、ギリギリのコストで動く当プロジェクトは外部に依頼もできず、有本さんも一瞬「もう、無理なんじゃないか」と思ったそう。その時、誰とはなしに手が伸びて、プロジェクトに参加していなかった時計を知り尽くしたスタッフ達が、自分たちでできるカット工程に動き出す。誰も、諦めなかったのです。

そんな開発を経て誕生した「TEN TO SEN」。12時位置と龍頭に配されるのは日本の花「ツバキ」。目立ちすぎず、目立たなさすぎず、所有者だけが時間を見るときに自然に目に付くようなサイズ感のロゴ。身に付ける人と時計に親密な関係を願うかのようなあしらい。「安いから」「流行っているから」ではなく「自分が、価値をおく相棒だから」と関係性が組める、人と時計の間柄。

6時位置には「TEN TO SEN」のテーマとして掲げられた「Connecting dots and there will be a line. (点と点が繋がり線になる)」という言葉を配置。防水表示や機能表示などと自然となじむようにさりげなく。そんな「TEN TO SEN」は当初、クラウドファンディングで賛同者も集めました。目標金額30万円に対し、結果は963%の289万円!!当プロジェクトの根底に宿るフィロソフィーに、いかに多くの方々が賛同の意を表したかが分かるエピソードです。

もうひとつ、皆様に知っていただきたいことがあります。この「TEN TO SEN」、保証は2年と長め。基本的に適切な修理を行えば、何十年と使うことができる…それが日本製。「自分達で作り、売り、修理する」を徹底するからこそ、このコストでこの保証期間を実現。作った売ったで終わりではない、お客様と時計との関係を末永くつなぐ役割をも果たす職人さんたちを、有本さんたちが心からリスペクトしている様子が言葉の端々から感じ取れます。

さて、そんな「TEN TO SEN」がTOKIAの店頭に並び始めています。お客様は「あ、いいなこれ」と手に取るそう。有本さんたちは「世の中に必要とされる普遍的な時計をつくろう」として、ほんとに実現しました。2016年のあの頃に世の中が失ったものがあるとすれば、この「あ、いいなこれ」だったんじゃないでしょうか。真価を観止める美意識に真っ直ぐに訴えかけてくる腕時計。理由も理屈も後付けで、一瞬で心を捉える本物の価値。「安いから」「流行っているから」なんて変な賢さは無用、ただただ「あ、いいなこれ」から始まる、時計と人との一瞬のインスピレーション。

では、ここからは全ラインナップをご覧ください。


【シルバーケース グレーダイヤル】(ダイヤル光沢あり・サンレイダイヤル)
コメント:究極の普通という観点では、このカラーがいちばん。シーンを選ばず、カジュアルにもドレスにも、どんな服装にも合わせられる守備範囲の広い1本。


【シルバーケース ブルーダイヤル】(ダイヤル光沢あり・サンレイダイヤル)
コメント:光沢感や光反射を重視したことで、ダークブルーにもブルーグレーにもブルーグリーンにも見える不思議なカラーに仕上がっています。


【ブラックケース ブラックダイヤル】(ダイヤル光沢なし)
コメント:高コストとなるので多くの時計会社がラインナップから外すことの多い「オールブラック」も採用されています!ダイヤルはギリギリまで光反射を抑えることでインデックス部分がより立体的に浮かび上がって見えるようにデザインされています。


【シルバーケース ブラックダイヤル】(ダイヤル光沢なし)
コメント:鉄板の組合せ。視認性の高さと時計然とした佇まいはまさに「1st STANDRAD」と言う名にふさわしい1本です。


【シルバーケース ホワイトダイヤル】(ダイヤル光沢なし)
コメント:長い年月をかけて紫外線でダイヤルが黄変しヴィンテージウォッチさながらになるまで使用してもらえると嬉しいです。

■「TEN TO SEN」/49,800円(税込)
・シルバーケース グレーダイヤル
 (ダイヤル光沢あり・サンレイダイヤル)
・シルバーケース ブルーダイヤル
 (ダイヤル光沢あり・サンレイダイヤル)
・ブラックケース ブラックダイヤル
 (ダイヤル光沢なし)
・シルバーケース ブラックダイヤル
 (ダイヤル光沢なし)
・シルバーケース ホワイトダイヤル
 (ダイヤル光沢なし)

「TEN TO SEN」公式サイト
https://tentosen-official.jp

店名:時計倉庫TOKIA 心斎橋筋店
住所:大阪市中央区心斎橋筋2-3-24ジャパンライフビル1F
TEL:06-6211-6570
URL:http://tokia-ssb.jugem.jp/

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