2025.03.10

360°ぐるっとイチゴイチゴイチゴイチゴ
味覚が再現する記憶の“あの頃”
まるで純文学な食未体験!

宇治園(喫茶去)

「記憶」が五感に蘇り、胸が締め付けられる味わい

ここ数年、喫茶去(宇治園)さんのメニューを追ってきた中で興味深いのが、メニュー開発における「概念」のこと。ちょっとワタクシ、めんどくさいこと言い出すけれど、ちょっと聞いて欲しい。

・時に素材特化(お茶)手法も内に秘めて、
・時に時流(トレンド)からも距離を置き、
・時に売価度外視に手の込んだ逸品を繰り出す

何かと外食商品開発セオリーを「知るか、そんなもん」と構いやしない、それが喫茶去さん。
でね、喫茶去さんの味って、脳が味覚を捉えた瞬間に「記憶」が五感に蘇るのよ。
いや、スピリチュアルとかそおいうことじゃなくてね。
その、ワタシらの身体がそおいう風にできていることを知り尽くした人がね、
実は、食べる人を懐かしい場所に連れていくような…、そんな味わいなのね。
でさ、数年前の数年間、正直キツかったやん??あの頃。もう思い出したくもないけれど。
でも、喫茶去の味って、あの頃に「途切れてしまった」ものを取り戻すような体験なワケよ。

「甘い」とか「旨い」とか「美味しい」とかを超えてね、なんか胸がきゅーーーんとなるワケよ。

さて。ここで喫茶去さんのおさらいです。京都山城にて1869年創業、現在は心斎橋に本店をかまえる老舗茶舗『宇治園』。
2階にあるのが「喫茶去(きっさこ)」と銘打ったイートインスペース。今回ご紹介するワンフロアです。

「名前に聞くけれど行ったことない」という方。人生かなり損してます!店内はこんな感じ。
賑やかな商店街とは一線を画し、落ち着きある空間が待っています。

今回のご案内は店長の伊藤さん。商品開発から店内でのおもてなし、マネージメントに店舗管理にとマルチに活躍する傑物。いつも商品開発秘話を教えてくれるのですが、その小出し具合がなんとも絶妙!
休日はご自身でも抹茶を点てる撫子さん、そしてディープパープルが好きという意外な一面も!そんな伊藤さんがこの春おすすめのセットが・・・

心斎橋店限定の『一期パフェ』。一期と書いて「イチゴ」と呼ばせるなんとも粋な一期パフェ。

この画面を見ただけで息が上がる方も多いはず。国産イチゴを山盛りとするtheシンプル系のパフェ。そして、宇治園自慢の点てたての抹茶(アイスも選べます)もセットに。

おいしいポイント①/ほぼワンパック使用、360°美しい

なんとイチゴは「ほぼワンパック」を使用。360°どこから眺めてもイチゴイチゴイチゴイチゴ・・・・・。
それだけじゃない、この山を崩してもワンサカとイチゴが埋まっている。
まるで宝探しのクライマックスが最初っからスタートしたかのような「いいの?ほんとにいいの?」感。

おいしいポイント②/もちろん国産。サクサク果肉が甘酸っぱい

みなさま、てっぺんのイチゴは間違いなくひと口で味わって欲しい。サクサクっとした果肉にジュワっとにじみ出る甘酸っぱい果汁。
「あぁ、春が来た」と反射的に納得させられてしまう日本の恵み。「(季節限定商品なので)味わう時期によってイチゴの質感が移行するのも魅力です」と話す伊藤さん。

おいしいポイント③/クリーム、バニラアイスが誘う「あっち側」

特筆はクリーム&バニラアイス。イチゴのテキスチャーや香り、酸味や糖度を引き立てて、際立たせる名わき役に「徹する」。
イチゴがイチゴ以上の魅力を発揮し、「あっち側」の道先案内人になっていくのが、この後・・・

おいしいポイント④/思い起こす、あの頃の場所

それは不意にやってきます。味覚が記憶の大海原の「ある一点」へと着地する瞬間。懐かしくて懐かしくて、たまらなさがこみ上げる感覚。たくさんの大人に見守れながらワガママいっぱいに生きていた幼いころの自分にオーバーラップするんです。

大げさだと思います?これ、ホンマやで。

リアルにはもう戻れないけれど、味覚は過去を再現できる。
甘さや酸っぱさ、ミルクのコク、香り、食感、すべてを投じて、五感と記憶がザワっと一瞬揺れるんです。

おいしいポイント⑤/その仕掛けは・・・

その仕掛けは、やっぱりあった。やっぱり喫茶去さんの「仕掛け」だった。
例えば、バニラアイス。バニラの味が本格的なものではなく「あえて、ミルク感の強いものを使っているんです」とタネ明かしする伊藤さん。
本格的な味よりも、食す人の「心・記憶」に訴える方を選んだ…なんともこの店らしい開発秘話。

おいしいポイント⑥/さらに仕掛けは・・・

さらなる仕掛けが、こちらの抹茶。

甘酸っぱいイチゴとミルク感の高いクリームで飛ばされた意識を、清澄な抹茶の風味がつなぎとめる。彼岸と此岸を何往復も行き来するごとに、さらなるトランス状態。
「煎茶やほうじ茶も候補にあったのですが、抹茶の方がパフェとのふり幅を愉しめるという結論になりまして」と開発秘話を打ち明けてくれた伊藤さん。
そのふり幅、ワタクシには相当に心地の良いものでした♡

おいしいポイント⑦/テクスチャーの移行

さらにグラス中央へと味わい進めますと…現れてくるのはグラノーラのざっくり食感。
ここでは多くを明かしませんが、このグラノーラの使い方やフレーバー選定にも仕掛けを秘めて、心地よい転調があらたなトランスを生み出すのです!

おいしいポイント⑧/終演にこそ切れの美学あり!これ、すでに純文学

最後にたどり着くのはこの底の部分。ツルリとした寒天と端正なシロップ、そしてベリー。
ここまで長くイチゴ&ミルクの「追憶」を彷徨ってきた意識が、突然に端正な風合いへと「半ば強制的に」着地させられる。まさにその瞬間に「追憶」は「記憶」であったことをまざまざと思い知らされるのです。

もう(イチゴ&ミルクは)無い、無いものをまた振り返る、そしてなんだか胸が、胸が、胸が、きゅーーーーーーーんと締め付けられる。まるで切れの美学の俳句的仕掛け!

おいしいポイント⑨/心して挑んで欲しい、豊かな体験です

ここまで読んで、またまた大げさな、と思ったそこのアナタ。

大げさだと思います?これ、ホンマやで。

ある人はイチゴひと口でハッとなるかもしれないし、別の人はバニラアイスでフワっと飛ばされるかもしれない、または別添えの練乳で一瞬時が止まるかも、もしくは抹茶の香りだけでグラグラとするかも。
Theシンプルなのに高密度な「一期パフェ」、実はこの先も季節ごとの展開が既に予定されておりまして・・・

初夏、盛夏、晩夏、秋口・・・・・・・、と現在もメニュー開発は続いています。
そこで最後に伊藤さんに聞いてみました。

「このメニュー開発は、楽しいですか? それとも…苦しいぃ??」
その答えは、
「すっごく楽しくて、苦しいですぅぅ…!」とのこと。

みなさま、ぜひとも喫茶去の『パフェ』シリーズにご期待ください!

◆一期パフェ/2,500円

※抹茶かアイス抹茶が付きます。
※価格は税込みです。
※在庫は変動します。ご了承ください。

宇治園(喫茶去)
住所:大阪市中央区心斎橋筋1-4-20
電話:06-6252-7800
URL:https://www.uji-en.co.jp

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