2018.05.01

読み解く「大阪」

Store Info

  • 店舗心斎橋アセンス
  • 住所大阪市中央区心斎橋筋1-6-10
  • 電話番号06-6253-0185
  • URL
    http://www.athens.co.jp
  • AREA
  • 4
  • EAST

DEEP大阪へようこそ

「DEEP大阪」といっても、いわゆる裏道案内的なものではありません。トレンド消費のような「ゼニで交換できる」ものではなく、「ゼニでは交換できゃしまへん」なモノコトをご案内したい!ゴールデンウィークに大阪へ立ち寄られる方、是非こんな本屋さんへ・・・。

ここは心斎橋アセンス。
この街が誇る!唯一無二の本屋さん。
このワンフロアに今回のDEEP大阪案内が秘められます。と、その前に・・・

当店の面白味が顕著なこちらをご覧ください。棚には「緑の棚」と記されています。

「緑の棚」では「みどり」という大きな視座で、園芸や実用、そして概念や提言、歴史に自然学と、様々な「本」がひとつの世界の体系を成しています。まるで棚全体がいっこの生き物のようにグイグイと自分に迫ってきます。迫ってくるのは未知・未知・未知で、未だ知らない万象が鮮やかすぎるほど極彩色に「これでもか」ってくらいの圧巻なのです。

こんな風に、おおきなカテゴリをヤンワリと定め、関連付けながらも独立した1冊の本たち。まるで誰かの私的な本棚を覗き見ているようで、ゾクゾクとしてきます。オンラインでの書籍購入では味わえない感覚です。 まったく知らない世界観に触れている手触りが、ヒリヒリとしたりポワンと温まったりと、「書店」ならばこそ味わえる興奮で息が上がるのです。

たとえばこちらの「社会・歴史」「考える棚」。「考える棚」では、哲学、社会学、生命学などの従来の分類が無意味に思えるほど。それらカテゴライズされる分野は、本来は万象の切り取りにすぎなくて、すべてがこの棚の中へとひとつに戻ってきたかのようなラインナップ。関連付けられたかのように陳列された背表紙が、思考の本来の楽しみを悠々と物語ってくれます。

そう、「いっこの生き物」「だれかの本棚」のような知の集体。それがアセンスの本棚。ひとつの興味関心が別の好奇心を刺激して、さらに繋がって拡大するかのようで奥まってゆくかのようで。

そんなアセンスの手法はこんなところにも。「白い本フェア」です。スタートの季節である「春」にふさわしい「白」をテーマに本が集められます。装丁が白であることをキィに、岡崎京子の「リバースエッジ」とマイケル・サンデルの「これからの正義の話しをしよう」が同列に並ぶ不思議さ。

そして今回紐解きたいのが「大阪文学」の棚。歴史・ルポ・宗教・エッセイ・落語に歴史建築に大阪弁や大阪のおばちゃん考などなど。ありとあらゆる大阪がズラリ。本日はここから、ゴールデンウィークに大阪に来られる方にお薦めしたいいくつかをピックアップ。

ワタクシの“独善と偏愛”でもって選ばせていただくこの2冊。パンクロッカーで芥川賞作家 町田康氏の小説です。明治の河内十人斬り事件を題材とした、主人公「熊太郎」の罪と罰の物語「告白」。今年の6月末に綾野剛×脚本:宮藤官九郎×石井岳龍監督で映画公開される「パンク侍、斬られて候」。南北で異なる活きた言語「大阪弁」がグルーヴィーに弾みます。

街遊びを楽しみに大阪に来られる方にはこちら。大阪の、いえ、関西全土を代表する草分け的情報誌の元編集長、江弘毅氏の「街場の大阪論」「飲み食い世界一の大阪」。有機体のような大阪をゆく「私」の身体。コンテンツや記号や数値で代替できない街の価値は、値切ったって旨く味わえない。そんな、極めて大阪的な大阪の街論。ワタクシのバイブルです。

さて、ここでスタッフの磯上様にご登場いただきます。この方も、相当に「本」に絶大な信頼を寄せておられ、大切に大切に本を扱う所作や当たり口からそれがうかがえるのです。当店の本棚をプロデュースする心斎橋の「知の傑物」とお見受けしております。

ご推薦いただいたのはこの2冊。建築史家の倉方俊輔氏が紹介する大阪の近代建築。それがなんと!読みやすい対談形式で記載されます。お相手は2014年の芥川賞作家 柴崎友香氏。大阪の街の風景を物語(小説)に効果的に用いる作家さんと建築史家の弾むような対談に「この場所行ってみたい!」と唸ること請け合いです。

次のご推薦は、小説家・推理作家 黒川博行氏の2冊。世の男性たちが震え上がった「後妻業」は大竹しのぶ主演で映画化。大阪を舞台にヒリヒリとする追い追われの痛快展開がたまらない「迅雷」。黒川博行氏が文中で扱う大阪弁もまぁ~見事!対話としてのそれ、恫喝としてのそれ、戯れとしてのそれ、媚びとしての・・・ほんと鮮やかにポンポンと交わされる活きた会話が魅力的です。

最後にお薦めいただいたのはこちら。上方落語の世界です!ホラー作家・SF作家として有名な田中啓文氏の「落語少年サダキチ」は小学生にも読みやすいSF×上方落語の物語。元吉本の台本作家でもありSF方面にも著名な田中哲弥氏の「鈴狐騒動変化城」は上方落語テイストの児童文学。こちらはもろに落語の題材のようであり、かなりぶっ飛んだ娯楽超大作でもあり。こんなところから上方落語に触れ始めるのもいいかも!

さすがの磯上さんセレクトに、カメラマンとワタクシと磯上さんとで「大阪文学」棚の前で会話が尽きません。そう、これもアセンスの妙。その棚を前に、あらゆる知識が刺激されて、しかもその知識が「夢中になって読んだ」という楽しい記憶で蘇る。そしてそれを誰かと話したくなる。棚の中も棚の前も、なんとまぁ、にぎやかなことで。

そんな心斎橋アセンス。店内奥には展示イベントや随時キャンペーンも展開中。往年のファンも納得のアート系・芸術系・サブカル系書籍も多々。心斎橋の「知のコミュニティスペース」とも言える、珠玉のワンフロアへ是非是非、ほんとに是非!!!

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