災害への備えをアップデート
怖いや不安を超えて「準備」を。
ハンズの売り場から見えてきたもの

ハンズ

少しでも「安心」が欲しい、そのためには？

当取材は2024年の9月中旬に実施しました。お盆期間以降の地震や台風で高まった警戒と緊張が緩和したタイミングです。私自身、少しでも「安心」が欲しかったし「備え」のアイデアが欲しかったこともあり、当取材を実施しました。取材先は『ハンズ』11階の防災アイテムコーナーです。ご対応いただいたのはお馴染みの森岩さん。いつになく神妙な雰囲気での取材となりました。

お盆時期の地震への警戒、そして、台風の到来。この間、やはり当コーナーは商品棚からあらゆる商品が売れ続け、品切れするアイテムも多かった、と話す森岩さん。「それだけ、準備が足りていないと不安になったお客様が多かった、とも言えます」と話す表情は真剣です。

ところが、「ただ、それだけではなく。興味深い傾向もありました」と話は続きます。
ここで、森岩さんが教えてくれたことと、私の所感も交えながら記事を続けますと・・・

例えば私（筆者）も、防災アイテムとして「簡易トイレ」を常備しているのですが、それはどれも“持ち運びに便利な”ポケットサイズばかり。「でも、もしも真っ暗な中で、リュックの中の〈それ〉を探し出せるのか？」となると、とても不安になってきます。

「それでは、こちらはいかがでしょう？」と見せていただいたのは『災害時の緊急トイレ』。凝固剤と消臭処理袋、汚物袋が各30個入ったワンボックス。さらには抗菌仕様となったアイテムです。尊厳にもかかわってくるエッセンシャルアイテム。これだけそろっていれば、安心度は高まります。でも、それだけじゃない。ここまでの大きさのあるアイテムだからこそ、照明のない真っ暗な中でも避難リュックの中を手探りで見つけやすい。そのほんとうに些細なことが、リアルな瞬間にどれだけ自分を気持ちを救うのか？とても具体的にイメージを刺激されます。

さらには、ひとつのコーナーを作っていた、ポータブル電源アイテム『Goal Zero』シリーズ。高性能かつポータブルで拡張性が高いソーラー発電プロダクトに定評があり、展開するアイテムの多くが同社のソーラーパネルからの蓄電も可能としています。「電気とソーラーの双方に蓄電チャネルを持つ、これがもう一歩先の安心につながるんです」と話す森岩さん。

同じように、ソーラーパネルを搭載したアイテムが幅広く展開されています。そう、もし自分が無事に避難所へ到着できたとして・・・刻一刻と変わる「情報」は安心の命綱。パニックにならないために、避難が長期化した際に不要な不安に押しつぶされないために、情報を得るスマホの充電チャネルに「ソーラー」を増やす、これだけでも安心の担保が確保できるわけです。

森岩さんが話す「ただ、それだけではなく。興味深い傾向もありました」というのは、まさにこのことでした。「お買い上げいただく商品の傾向が、より具体的なシーンをイメージした対策になってきているんです」と。

先に起きた災害から、あらゆる情報が共有されてきた日本。情報はより具体的となり、現実的なケース＆対応として、消費者ニーズと各メーカーの商品開発に「おおきな機運」を生み出しています。「起きた災害からなにを学び取り、対策を講じていくのか？その解像度が上がっていると感じられます」と話す森岩さん。家の中で、会社で、移動中に、就寝中に、避難所で、避難生活が長引いたときに・・・そんな具体的なシチュエーションを想定したアイテムの買い回りが、今回顕著であったのだと。

ここで「就寝中に・・」というのがまったく盲点であったことを実感した私。「たとえば、こんなアイテムも注目です」と教えてくださったのが防災ルームシューズです。「深い眠りの最中にぐらッときて、飛び起きる。その時に床に散らばったガラスを踏んでしまう。この怪我が避難の移動を困難にさせる。そんなシチュエーションを防ぐアイテムなんです」と教えてくれます。

耐踏抜き性インソールを内蔵し、「釘を踏んでも大丈夫」なこのルームシューズ。より解像度を上げたシチュエーションアイテムとして、これほど納得のものもありません。

そのほか、水やお湯を注いで出来上がる防災食、家具を固定する突っ張り棒、多機能寝袋やカナリアホイッスルなどなど。当コーナーにはあらゆるアイテムが並びます。

私のようにまだまだ解像度が低い場合、どうしたらいいんでしょうか？という質問には「むしろ、このコーナーに足を運んでいただければ、具体的にどんなシチュエーションが想定できるのか？がイメージできる、いまはそんな売り場となっています。アイテム探索だけじゃなく、何が起きるのか？どう困るのか？その具体的なイメージを起こして欲しいんです。皆様の気づきとメーカーのプロダクトを結ぶ役割がここにありますから」と力強く話してくれる森岩さん。
今回、ハンズの売り場から見えてきたものはとても大きなものでした。