満を持して、今年はやる!
男性浴衣のエトセトラ
心斎橋で粋でイナセな伊達男
松屋
今年はやります。
男性にも「浴衣でキメたい」ニーズがあること、ワタクシはずっと恣意的に見過ごしてきました、皆さまごめんなさい。自分の力量では男性和装に関してどこまでお伝えできるのか腕に不安アリだったのです。ですが、2023年今年は挑みます。初めてのことは誰でも戸惑うものですし緊張もします。そう、これを読みながら「今年は初めて浴衣を楽しみたい」とお考えの男性と同じです。ワタクシにとってもチャレンジング。だから、、、強靭なアドバイザーにSOSを出したのです。
それがこの方、柴橋弘宣様です。ご覧ください、鮮やかなブルーの浴衣でご用意いただきました。って「ブルー」なんて表現いいのでしょうか??「ええ、いいんです。わたしもブルーだと思って着用しています」とニッコリの柴橋さん。陽光の下でなんとも映えるブルーの浴衣。そう、ここはどこかといいますと・・・
心斎橋筋商店街の中「心ぶら街」の最奥、松屋さん。そこで松屋のおさらいです。創業は昭和21年の呉服の老舗…なんて聞きますと、すっごく緊張する呉服屋さんを想像しますよね?実は同店は真逆の一軒。「祖母の着物をたくさん譲り受けたんだけれどどうしよう」「初めて着物を一式そろえるのですが…」などなど、着物にまつわるあらゆる相談に乗ってくださる老舗店。門戸を広く・守備範囲も広く、実生活の中でもっともっと着物・和装に親しんでいただきたいを信条とされています。
もちろんそれは、和装に対する正統な知識・確固たる美学をもってこそ。その上で、柔軟な視野を併せ持ってこそ。本日の柴橋さんは、ブルーの風合いを際立たせる帯に黄色をセレクト。こんなにビビットに色を遊びながら「キュッ」と締まるのは正統な着こなしの賜物。
「例えば、男女お2人で浴衣の相談にご来店される。女性はご自身に似合うものを求めて、いろんな柄や帯を楽しんでご覧になってくださいます。でも男性は〈なんでもいい〉になってしまう傾向がありますね」と話す柴橋さん。でも本当は興味もあれば、選んでみたいお気持ちも汲み取れる…だからこそ柴橋さんは〈男性にこそ浴衣でお洒落の門戸を広げたい〉と考えておられます。
とはいえ、男性の浴衣って…紺とか黒とか、鼠色とか。なんだか選択肢が狭いイメージもあり…。そう言うワタクシに「では、これをご覧ください」と、柴橋さんは…なんと私物の浴衣を持ってきてくださいました。(なかなか無い機会です!!!)
ホワイト×パープルの粋! クールな隈取柄にウットリ♡
あれま!これは白の浴衣です。そして紫のグラデーションで象られる隈取柄。歌舞伎のメイクをうっすらパープルに映し出す、なんとまぁ男前な!
そこに合わせるのが薄桃色の献上帯。ランダムに配される隈取柄に整然と並ぶ帯の柄。この対峙は…とっても粋です。
Theマスタードカラー! 古典的文様の変形Ver.がとにかくあたらしい
続きまして、一面のマスタードカラーが登場。男性の浴衣ってこんな色合いもあるんだ!と発見と驚愕。しかも麻の葉文様(日本の古典的パターン)の変形をパキッと白で配置。
そこに合わせるのが白色の献上帯。あぁ、これは、まるでお洋服の色合いコーデのごとき…。「いえいえ、今は洋服でこんな思い切った一色は難しい。だけれども和装ならばキマる。実は洋服よりも和装の方が色の冒険が楽しめる、私はそう考えます」とニッコリの柴橋さん。
以下3点のポイントを意識して、色の冒険を楽しみつくす!
固定概念を覆す、男性浴衣の色あそびの世界。そんな弾みも「しっかりと着用できているからこそ」と話す柴橋さん。そこで、浴衣着用の際に「クセづけておくといい意識ポイント」をいただきます。まずはコチラ。浴衣着用の際は、この画像のように「上前の衿先」部分をキュッと上げるクセをつけて。そうすると、真正面から見た際に上前の裾が高い位置にある状態がキープできる。これが正しい着こなしです。
次にコチラ。襟の合わせを常々キュッと締める動作をクセづけておく。ここがダランとなるとだらしのない印象に。「そんなに神経質になることはありません。気づいたらキュッとする、それだけをクセづけて」と柴橋さん。
最後はコチラ。帯をグイっと下ろす動作をクセづけておく。身体の動きに合わせて、どうしても上に上にと上がってきてしまう帯。これを骨盤位置にグイっと下ろす。もしくはこのように親指を入れて着付けた時と同じ位置にあるか確認するだけでも意識して。
「慣れればなんてことありません」と話す柴橋さん。男性のお客様には柴橋さんが直々に教えてくれます、皆さまご安心を。「とはいえ、いきなりカラフルな浴衣は敷居が高い」そんな声も聞こえてきそうですが…「もちろん、落ち着きある色合いの浴衣でも充分にお洒落はできます」と柴橋さんはニッコリ。それを証明するかのように、この後見事なコーデが連打!!!
①古典柄のモード性に驚く!?
こちらはいわゆる「古典文様」と言われるデザイン。皆様、よーーーくご覧になって!この近接 (Proximity) / 整列 (Alignment) / 反復 (Repetition) / コントラスト (Contrast)の妙味。まるでモダンな粋さに驚きます。
ここに帯を合わせた時…さらにインパクトは絶大。柴橋さんが「もちろん、落ち着きある色合いの浴衣でも充分にお洒落はできます」と話した意味がよーーーく分る!
②白場の美しさが溜息もの…。
こちらは杵(きね)の連続性の中に、効果的に配される「源氏車」。何が美しいって…白場の美学。白の美しさが際立つ、弾みある意匠。
だからこそ!帯は紺。上下に延びる杵(きね)意匠をキュッと左右に横断する献上帯。柴橋さんのような浪人結びでイナセにキメて欲しい!
③一見して「上品」。その理由は我々のDNA??
つぎは菱柄を連ねたミニマムなイメージ。それでいて第一印象はエレガント♡なぜそう感じるのか?その理由は…この意匠に縁起の良い意味が込められているから。
それは白い帯を置いた時にもよく分る。このシンプルな菱形は、これをベースに「花」や「鶴」など多彩な変形もあるほど…私たちの脳裏に品の良いイメージが刷り込まれているのです。
④「人のつながり」を願うデザイン。
こちらは「鐶(かん)つなぎ」といって、連なった輪からなる意匠は「人のつながり」や「ご縁・縁起」を意味するそうです。
舞台役者さんが稽古で身に着ける柄としても有名な「鐶(かん)つなぎ」。ここは敢えて白い帯で白場を強調。
⑤男前デザインにウットリ◎
つぎも隈取です!ただし、先ほどの柴橋さんの私物とは異なりモノトーン意匠。ただこれが…モノトーンならではの存在感に恍惚!!カッコイイ♡
深いグリーンに合わせるのは淡い桃色。どちらの色も際立たせ対峙させる色使い。浴衣デートにも粋ですね!
⑥ハイエンドブランドも採用するあの迷路柄!?
ちょっと横道行きますけれどスミマセン!これをパッと見た時に…かのハイエンドブランドを思い出したのはワタクシだけじゃないはず。それくらい、ワールドワイドに普遍的な意匠「迷路柄」。
かなりの存在感を放つこの一枚には、献上帯を裏返して…1本線を表側に。相当にモード!それでいて古典的!
⑦帯の質感を主役に-1
コチラはワタクシもすっかり気に入ってしまった1枚。黒をベースに白ラインが幾何学。その上、紫のラインがカラーポイントを添えています。
こちらには光沢美しい無地の帯を。帯を主役に魅せていく組み合わせですね!
⑧帯の質感を主役に-2
おなじ考え方で、こんなバージョンも。
⑨こんな一枚には…
こんな合わせもあり!
その他、使える技やアイテム、着こなしもご覧あれ!
さて、浴衣はそろった。しかし他の問題は山ずみ…。そんなアナタもお任せください。例えば、足元の問題。柴橋さんは「慣れていないと下駄は危ない」と指摘、初心者の方には雪駄をおススメしています。※雪駄A
ソール部分全体に滑り止めが施され、大勢の人が出歩くような催事の場所でも動きやすい一足。
特に、こちらは畳素材がクッションとなっていて、長時間の動きにも疲れにくい仕様となっています。※雪駄B
ソール部分にはもちろん滑り止め付き。
「お財布はどうやって持ち歩いたらいいの?」そんな疑問にもお応えしましょう。例えば、柴橋さんは小さなガマ口に、このように干支彫り物の根つけを付けており・・・
帯にしまって、根つけを装飾として魅せています。帯の黄色に赤のカラーポイントを添えて、これもなかなかにシャレたアイデア。
スマホは手ぬぐいにサッとくるんで・・・
胸元にスッと納める。手ぬぐいの生地が摩擦となって、スマホがストンと落ちない仕掛けです!
特筆は…この「しりっぱしょり」という着こなし。ステテコを履いて、こんな風に「しりっぱしょり」にすれば、自転車だってOK!活動的に過ごしたい日も自由に身体が動くのです。このアレンジ、なかなか粋です!ヤンチャなのに上品なんて和装ならばこその絶妙すぎるほど絶妙ポイントではないでしょうか!
そんな柴橋弘宣さんとは…何者なのか!?
「何者なのか!?」なんて失礼なこと書きまして申し訳ございません。ですが、ここまで読んでくれた方の本音としては…やはり驚きが先に立つことかと。昭和21年創業の呉服屋さんがですね、ここまで自由かつ現代の実生活に寄り添った提案をくださる。嬉しいけれど「なんで!?」も同時に沸き立たせてしまう…ご店主の柴橋弘宣さん。
そんな柴橋さんの実像に迫るにあたり、欠かせないのがこのイラスト。ワーゲンバスにもたれる女の子はスイカを手にビーチサンダル・・・。
ビートルでデート中の仲良しカップルや、
こちらのカップルは男性のお洋服に「VAN」の文字。これらイラストはすべて柴橋さんの作品なんです。
船場のいとさん、こいさんのお出かけや、南での観劇途中のアプローチ、百貨店や専門店。女性が華やぎ、男性が最高にカッコよかった、かつての心斎橋。そんな街を眺めながら育った柴橋さん。70年代に学生時代を送った柴橋さんですが、時はまさに「popeye」が創刊され全盛期の頃。当時の学生たちが西海岸に憧れたあの時代。ファッションもカレッジライフも嗜好も遊び方も…プレッピーなカルチャーが旋風を巻き起こし、柴橋さんは心斎橋・呉服屋育ちならではの感度で、その風を“まるごと”楽しんだ学生時代だったそう。
やわらかな風合いで描かれるこれらの作品は、心斎橋の古き良き情景とアメリカのプレッピーカルチャーの対極を一身に秘めた柴橋さんご自身なのかもしれません。右のポストカードは芸妓さんの丸うちわ。古典的な笹竜胆(ささりんどう)紋が描かれていますが…そのタッチはとてもとても柔らかく…。
映画や音楽もお好きなようです。
左はドリス・デイ『Teacher‘s Pet』(1958年)、
真ん中はスモーキー・ロビンソン & ザ・ミラクルズ『You’ve really got a hold on me』(1963年)
右はミッシェル・ポルナレフ『Tout, tout pour ma chérie』(1969年)
それぞれの歌詞と、それを口ずさんでいるかのような女の子の後ろ姿。
ご自身が大好きであったものを今も慈しみ大切になさっている。そんなご店主・柴橋さんだからこそ、お客様が「自分はこれが好きだ!」という気持ちもきっと大切にしてくださる。そう思えば…2023年の今年に「初めて浴衣を自分らしく楽しみたい」男性の強い味方であることは間違いありません。
そして最後に、「例えばね、御爺様やお父さんの着物でも、現代にだって着こなせるものなんです。和装には流行がありませんから。お手元の和装で困っていらっしゃる方も、ここに持ち込んでどんどん相談して欲しいです」と話してくださいました。
◆男性浴衣①~⑨
各/7,980円
◆帯
①~⑥、⑨ 各/3,480円
⑦、⑧ 各/4,380円
◆雪駄A 7,980円
雪駄B 23,800円
◆着付けのご相談も伺います。帯の結び方などスマホで動画撮影も可能です。
その他、なんなりとご相談ください。
※上記金額は税抜価格です。(参考価格です)