2016.06.01

心斎橋焙煎所 | 特集 201606

心斎橋焙煎所

Store Info

カフェラテ飲みたい。

心斎橋に焙煎所がある、まことしやかな噂を聞いてやってきたのが「心斎橋焙煎所」。オープンから約1年。噂が噂を運んで、このエリアに街的サードウェーヴの上陸が実感できます。

当ショップには焙煎機があり、世界に名高いエスプレッソマシーンがあり、有名なバリスタがいて、世界中から豆が集まり、独自ブレンドも巧みである。書けばそおいうことになっちゃうんですが、いっこいっこの意味をもうちょこっと掘り下げてみます。今はam10:20。店外にはもう薫香が漂い始めています。ではオープン11:00前の取材の特権にて入店してみます。

香りの元は焙煎機でした。1932年に歴史さかのぼる国内メーカーの重機は重厚な存在感。ここでは熱風と直火の双方を叶える一機を設え、熱風のクリアな酸味と直火のボディを調整。

なぜなら、豆によって理想とする焙煎は異なり、またブレンドの際にはさらに複雑さを増すから。芯まで加熱し水分を抜く。大きくて硬いコロンビアも柔らかなブラジルも、その日の湿度・温度に翻弄されやすい。テストスティックを操りながら、焙煎の最高分岐点を捉えて・・・

焙煎は終了。圧巻の煙とともに豆たちがお目見えします。

「浅煎りで長時間」「深煎りで低温」など、豆×煎り方×熱の加え方×時間・・・無限の取捨選択と組み合わせで「豆」は最大限の風合いと奥行きを醸し出すそう。たとえば果物の種のように、たとえばレモンの酸味のように、たとえばピーチやマンゴーといった熱帯の果実のように。それらをブレンドしたオリジナルは約10種以上。こちらのバリスタ青木氏にお話を伺います。

“バリスタ”として世界的な大会入賞者としても有名な青木氏。ベーカリーカフェでラテアートに研鑽を積んだ約10年前からキャリアは始まる。注ぐ工程やカップの形状、マシンの型に豆の種類。記号で同条件を満たしても決して同じ味にならない。日々変わる生き物のような一杯に魅了され、データ化もノウハウ化もできない捉えどころのないコーヒーの世界へとのめりこんでいく。

次第に、指の振動や香り立つ強さ、その日の湿度や温度を鑑みるにつけ、水温や豆の状態といった糸のようなヒントをつなげてゆく。いたった答えが「焙煎」であったそう。「この焙煎機を扱うようになり、これまで手探りであったものの法則がようやく見えてきつつある」と1年を振り返る青木氏。発見できなかったものの発見であり、まだ発見できないものがあることも発見したと話す。今もまだ進化の過程と言い切る口ぶりに、味わう側として期待は高まるばかり。

そんな青木氏は近い将来に“豆づくり”にも食指をのばしたいそうで、注ぐプロから焙煎の技術者に、さらには生産サイドへと、コーヒーへの探究心はつきない。精力的に世界的な大会へ出場するのも、自身の技術と造詣を試すため、挑むため。だから、勝利や優勝には絶対的に不利な難易度の高い一杯で勝負する。それが知るひとぞ知る「幸子」。

今日のカフェラテ「幸子」は、ブラジル・コロンビア・エチオピアの長時間低温焙煎。用いるマシンは本場イタリアのチンバリで、青木氏いわく「0.5度ずつの抽出温度再現が可能」とのこと。正直、1度でも違いが分かるのか微妙なところ、0.5度の差異にどれだけ意味が含まれているのか??

さらには、酸素を多く含むフォームドミルクの温度はシルキーな口当たりにする為70度前後に保つという。シアトルスタイルの熱々モコモコ泡に慣れた口には、物足りなさを思わせる。0.5度の違い、70度前後の泡に疑問を感じながら、青木氏の手を追ってみた。

メッシュ(粒度)を合わせ、ドーシング(粉を詰める)やレベリング(粉を均す)の工程を経て、適切な圧をかけるため粒同士の密度を高める(タンピング)。

カフェラテ「幸子」はクアトロショット。1202のカフェラテカップに濃い部分だけを抽出したエスプレッソが注がれ・・・

70度のフォームドミルクがカップに注がれる。青木氏の射るような目とミルクの振動を受け取る両手。

肩が上がり、呼吸も止まる青木氏。固唾を呑むこちらも・・・目が離せない。

見てください、この華奢で可憐な「幸子」さん!いわゆる「チューリップ」の様なデザインとは密度が全く異なります。一発勝負の大会で、守りではなく攻めとして繰り出す「幸子」を・・・いただきます!

温度、密度、味、口当たり・・・「幸子」を構成するすべての要素がどこを目指して何がしたいのか、素人のワタクシにも一瞬で感受できるほどの、完璧な調和!だから0.5度の差異に厳密となり、だからフォームドミルクは70度前後で柔らかさと適度な厚みを創りだしていたのかと深く納得するのです。

そして、もっと質問したくなる!「これはどうして?」「これはどういうこと?」体感が好奇心になるまでに一瞬です。それくらい、分かりやすくも高度な技の結晶ともいえる一杯。でも最後は「ああ~」としか感想が出てこない!

さて最後の質問、どうしてこんな焙煎所を心斎橋にオープンさせたのか?「心斎橋は多種多様なスタイルの人が行きかう街。豆と焙煎と注ぎ方やブレンドの個性が多様なように、多種多様なニーズ&ライフスタイルでそれぞれの一杯をより価値高く感じていただけると思っています」と青木氏。オープンの11:00となり取材は終了。この40分が1日に思えるほどの高密度、そして「幸子」1杯を味わう時間はもっと長く感じられるのです。

さて、カフェラテ「幸子」ですが、ネーミングには様々な憶測が飛び交っているようで。真相を知りたい方は、ぜひ「心斎橋焙煎所」まで足をお運びくださいね。
※裏メニューにつき、ご注文の際は「幸子」とお伝え下さい。

  • カフェラテ「幸子」 470円
  • ※全て税別価格

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