2025.04.04

心斎橋から〈はたらくヒント〉
カステラ銀装の赤木さんに訊く!

カステラ銀装

2025年、新年度が始まりました。原油高騰や働き手の不足、GDP停滞感など実社会で働く社会人の閉塞はこの先も続きそうな予感です。
そんな中、新しく社会人となった方々や若手の社会人の心中は常に不安と隣り合わせ。
今回は「傍らで働く誰か」に向けて、心斎橋筋商店街の『カステラ銀装』を運営する、株式会社銀装 常務取締役である赤木康人さんのインタビュー記事をお届けします。

はたらくヒント、その手助けになるかもしれない、興味深いお話が伺えました。

『カステラ銀装』とは1952(昭和27)年に創業したカステラ専門店。
心斎橋筋商店街に展開する一棟には、1F物販と2F喫茶スペース「カフェ・ラ・サール」があります。

現在常務取締役を務めるのが赤木康人さん。1980年生の赤木さんは29歳で『親孝行の気持ちで』同社に入社。
工場での製造や物販の売り場を経て、30歳で役員として広報全般を手掛けることとなります。

次第に『やるべきこと』が視得(みえ)てくる。

「親孝行なんて生ぬるい覚悟じゃダメだった」と当時を振り返る赤木さん。
その時点で半世紀企業であった株式会社銀装は、いろいろな意味で自分自身には大きすぎたことを実感したと話してくれます。同時に、その頃主流であったTVや新聞、雑誌などへのメディアアプローチ強化を手掛けていき、 実直に取り組むほどに視得(みえ)てきたのは『この会社に足りないもの』。赤木さん、30歳の頃でした。

『カステラ銀装』とは

ここでいちど『カステラ銀装』を振り返ります。
ここにある一冊の本は1975(昭和50)年に非売品で刊行された『 学問も原料 –銀装物語- 』。

『学問も原料』とは、創業者である赤木康夫氏が定めた3つの社是の一説です。
筆者の意訳で大変恐れ入りますが、同社で長きに継がれる社是をまとめますと以下になります。

1つ目は「学問も原料」
粉や砂糖、たまごなど大切な原料と同じくして「知識」「思考」「論理」も原料。
「どうすれば?」と問い、あらゆる手段を想定し、ゴールと着地点を見出すこと。

2つ目に「絶世の品質」
一度理想の味を作り遂げたら、それで終わりではない。
「世代を超えて愛されるもの」は、その時代その時代の期待に応え、また超えていくものでなければならない。
味を守ること、味の進化を遂げてゆくこと、この2つは一見相反するようで「同義」であること。

3つ目は「経済味覚」
例えば1000円のものを1000円の価値を守りながら100円で提供できるように「どうするか?」を考え続ける。「どうしたら、多くの方に味わっていただけるか」を探求し続けること。

そんな社是の元、創業当時には高級品であったカステラを大衆が味わえるカステラへと推し進めたカステラ銀装。
「どうしたら、多くの方々に味わってもらえるか?」を考え尽くし、そのためには売価を下げなければならないし、賞味期限だって少しでも長く、それでいて味も高めなければならない。
こんなありえない無理難題を〈やり遂げて〉〈持続している〉〈進化させている〉
それがカステラ銀装の歴史なのです。

気づきが確信に、そして課題に

その上で『この会社に足りないもの』に気づき、課題として強く意識した赤木さん。

商品開発力と時代に合った経営力が、この先もっと必至となると直感したんです」と話します。その直感は、冷静で客観的な論考を経て確信へと変わり、看過できない課題として自身の中で次第に強くなっていきます。
(ここで注釈です。「商品開発」や「経営戦略」といったものは、それだけで専門企業もあるほど専門的な分野であることを前置きます。いわゆる、商品開発企業やコンサルティングといった事業が世に成り立つ背景には、自社内に専門的知見を持つ人材を確保できないという事情が聴かれるところです。)

歳がいくつであっても、始めなければならない時がある

そこで赤木さんは周囲が驚く選択をします。商品開発力も経営戦略強化も、自分自身に身に着けようと決断したのです。

・レコールバンタン大阪校
・大阪府洋菓子技術専門校

まさに、自分よりも年下の生徒たちと机を並べて技術習得から洋菓子の体系まで学ぶ日々。

同時に、
・経営大学院でMBA(経営学修士)
にも就学。どれも、カステラ銀装の事業業務に取り組みながらの同時進行。赤木さん、30歳~34歳の頃でした。

「働いていても、いくつになっても、学びを始めることができるんですね」と伺う私に、
「ちがいます。働いていても、いくつであっても、始めなければならない時があるんです」
と答える赤木さん。その説明に、熱が帯びていきます。

時間はかかっても、最短距離を選ぶ

自身が商品開発力や経営戦略力を身に着けていくには「確かに時間がかかるんです」
そう、外部専門企業に依頼する方がはるかに速い。
それでも「自分が習得した後は課題解決速度が格段に速くなる」。誰かに依るでなく、自分自身で解決していく方向に舵を切った赤木さん。

「時間はかかっても、事業利益のためには最短距離となる、いえ、最短距離に〈自分で〉してみせる」と決断したのです。

意味を持たせるか否かは、自分次第

MBAはもちろんのこと、製菓の学校でも全力で学び、取り組んだ赤木さん。
ただ、ほか大勢の生徒さんとは異なり、赤木さんはカステラ銀装に還元する技術を求めて通っています。用途の見いだせない訓練だってあったはず。そう問う私に赤木さんは首を振ります。

「学んだ内容に意味を持たせるか否かは自分次第なんです。意味がないなぁと感じるのは受動的な姿勢。主体的に取り組めば〈どう活用するか〉を探求し続ける。無駄なものなんてほんとうにひとつもないんですよ」

その最たる例として「カステラパフェ」に乗る飴細工があります。この一品のなかで軽妙でキュートな食感を生む飴細工。そして、名品であるCASTE 11(赤箱)の特性を存分に活かす「カステラホットプリン」のプリン液も。赤木さんが製菓の学校で習得した知見が注がれる人気メニューです。

自分の〈 都合のいいように 〉やれ!

とはいえ、就活を控えた学生さんや新社会人たちにとって「この学びは●●という成果に繋がります」と、あらかじめ結果が担保される学びや訓練しか「選びたくない」というのも本音。

コスパ・タイパ良く物事を習得していきたいという欲求は近年高まるばかりです。
これに対し赤木さんは、「リスクに備えて万全に準備する」「出たとこ勝負だと覚悟を決める」どちらの方法を取っても「上手くいくorいかない」は現実的に起こり得る。
「その時に目前の事態をどう引き受けるのか?」に注視するのです。

失敗したくない、折れたくない、無能だとジャッジされたくない、そんな誰もが抱く〈恐れ〉。
どれだけ恐れても〈やらなければ〉失敗も成功も、そもそも有り得ない。
Aパターン:リスクに備えて万全に準備する
Bパターン:出たとこ勝負の覚悟を決める
「どちらにしたってWin or Loseは決まる。ならばAパターンとBパターンの、自分なりのバランスを早く見つけるべきです。人にはそれぞれに最適のA/Bバランスがあるのだから、
自分にとって〈 都合のよい 〉トライアルを重ねていくしかないんです!
だって自分の人生なんだから。誰も代走なんてしてくれませんよ」

自分が輝ける期間は〈 有限 〉という残酷な現実

失敗や評価を恐れて、合理的な選択探しを言い訳に、一歩も足が進まない。
そのことに赤木さんは警鐘を鳴らすのです。「お菓子と同じで人にだって賞味期限はある。60代や70代で活躍し続けるなんて一部の天才だけ。我々凡人が己のリソースを最前線で輝かせる期間は有限です。この残酷な現実を引き受けずして、真に自分の人生を構築することはできない」のだと。

続けて、「自分の人生は自分でマネージメントする」その覚悟で始めなければならない時が誰しもある、のだと。

始めるキッカケ。赤木さん流のヒント

赤木さんのこういったしなやかな強さは「もともと自分に備わっていたわけではない」とも話してくれます。製菓の技術やMBAを志す以前、赤木さんにも越えられない壁は当然あったそう。
その壁と対峙しながら、ふと「やり残したことはないだろうか?」という問いが思い浮かんだそうです。やり残したことをできうる限りやってみよう、やってやろう、だって自分の人生なんだから。

そう決意した赤木さんが始めたこと、その中には「フィジーク」もありました。

やり残したことを指折り数えながら、学生のときに最終結果に納得できなかったスポーツのことを思い出した赤木さん。同じスポーツは今の生活ではできないけれど、

・身体を鍛えようと思い立ち、
・自身の体調条件を鑑みて、
・方法を探す。
・そして「フィジーク」と出逢う。

フィジークとは、いわゆるボディビルとは異なり、上半身の筋肉バランスを評価する競技。「自分が納得する結果が出せるまでやってみよう」と決意したのが、赤木さん39歳の頃でした。

「フィジーク」という競技を39歳で始める。この業界の中でもかなりのイレギュラーな存在であった赤木さん。ところが、その結果が、この画像のとおり。
週に6回のトレーニングを欠かさず、食事にも気を配り、重ね続けた日々が、さまざまな大会での結果につながっていったのです。この結果は確実に赤木さんの〈 自分を信じる力=自信 〉に結びついており、赤木さんらしいしなやかな強さを支える礎となっているのです。

これからの「カステラ銀装」~社是の解釈~

冒頭で説明したカステラ銀装の社是。この社是も時代に応じた解釈を考え続けなければならないと話す赤木さん。
「創業者は、高級品であったカステラを大衆の手が届くカステラに推し進めました。それはポジティブなインパクトをでもって、カステラ業界のみならず社会全体への貢献であったと思います」と前置き、続けて「その貢献と地続きに、ハイクオリティに見合った高単価のカステラ、という嗜好を市場に広げることも今後の使命だと考えています」とも。
創業者・赤木康夫氏の写真を眺める赤木さんの目線は次のステージを見据えているようです。

これからの「カステラ銀装」~この先100年へのワンピース~

カステラ銀装が創業してから70余年。赤木さんがカステラ銀装に携わってから約16年。いまの赤木さんの目にどんな展望が見えているんでしょうか。
「“大阪を代表するお菓子を作っている会社” が目指していく姿です。たくさんの方が知っていて、たくさんの方が味わった経験があり、たくさんの方に思い出や愛着も持たれている、そんなカステラ銀装になっていく。そのために、創業者が起こした素晴らしいインパクトを〈 自分も 〉起こしていかなければなりません」。

広報・経営・商品開発、3つの柱をご自身に課し、時にスーツで、時にコックコートで、己のリソースを最大限に発揮し続ける赤木さん。
連綿と継がれてきたカステラ銀装のフィロソフィーをこの先100年にもつなげていくため、大きな歴史のワンピースを担う覚悟。そのためには変革もいとわない。最後にメッセージをいただきました。

ドン詰まりになった時、周囲が変わってくれたら、と思ってしまう。
けれど、変えるべきは「自分」。自分が自分の人生の主人公なんだから。
その方が、苦しくて険しくて、断然に〈 楽しい 〉から。

店名:カステラ銀装 心斎橋本店
住所:大阪市中央区心斎橋筋1-4-24
TEL:06-6245-0021
URL:http://www.ginso.co.jp

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