「べらぼう」に別嬪な3名の姐さん
出逢ったのは古書店「中尾書店」
木版の名画も入手が可能です!
中尾書店
べらぼうに話題、あのドラマに触発されて・・・
蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)のドラマが始まり、月曜日の会社のロッカールームが賑やかとなる今日この頃。これまで遠い存在であった浮世絵や美人画に「描かれたのは生身の人間である」という背景の想像を掻き立てられて〈思うこと〉の多い昨今です。そうすると・・・
・TVモニター越しじゃなくて肉眼で見てみたい
・描いた人の技を肉眼で凝視してみたい
・江戸時代の女性に思いを馳せてみたい
こんな気分が高まってきます。
そこで・・・やってきたのがこちら。
さかのぼること1967年(昭和42年)、創業者・中尾良男氏が開業した「中尾書店」。
江戸時代の和本を取り扱う古典籍売買を主に「先人が残されました良書を後世に伝えて行くことが、私共の仕事です。」と話す、ご店主。
あらためて書きますと、中尾書店さんは買い取って販売する…古書店。この古書の巡りは年々衰微の一途。世に廻る古書は確実に減ってきていると実感するスタッフの田村さん。
だからゆえに、過日の記録をこの先に「伝えよう、伝えよう」と静かな高揚感が店内に溢れています。
ご案内いただいたのが、同店の田村さん。
田村さんの口上(説明)はいつも弾みがあって、活き活きとして、起点から終結までの物語性にあふれています。伺っていてワクワクする話しぶりに、興味関心がグググっと刺激される、そんな田村さん。
中尾書店の浮世絵➀/神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)葛飾北斎
まず、見せてくださったのが、世界的にも有名な「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」。
実は、中尾書店ではこの作品を現在の印刷ではなく、もともとの「木版」で取り扱っています。
というのも・・・木版を所有している老舗さんと中尾書店さんは長年の信頼が築き上げられており・・・とのこと。そのため、、、
木版ならではの色の出方に目が釘付けとなること間違いありません。スマホやモニターで眺めるのとは段違い。こんなに目を射抜くような「青」。この絵のある種の怖さがまざまざと感じられます。
中尾書店の浮世絵②/凱風快晴(がいふうかいせい)葛飾北斎
もうひとつ。「赤富士」としてあまりにも有名な「凱風快晴(がいふうかいせい)」。
みなさまもすぐに気づいたはず。この「赤」、こんな色だったんですね。肉眼で見て初めて理解ができる流麗さ。山肌を赤く染める富士に目を奪われた当時の人たちの気持ちも伝わってきます。
この作品を裏返すと・・・このように紙越しに透ける色合い。
「これが木版であることの味わいのひとつですね」と話す田村さん。バレンをぎゅっぎゅと押し付けて広げる職人さんの技が感触として感じられる。
中尾書店の浮世絵③/山下白雨(さんかはくう)葛飾北斎
もうひとつ。「黒富士」としてあまりにも有名な「山下白雨(さんかはくう)」。
山頂と山麓の晴と雨をひとつの富士に描く、こちらもファンの多い作品。
もちろん中尾書店では木版のものを取り扱っています。
いよいよ、今回の大本命に行きましょう。
そろそろ、今回の取材大本命に行きたいところ。そう、「美人画」です。美人画が描かれた背景や史実的なものは、みなさま他でお調べください。今回は鑑賞の味わい方・・・そうです、ワタクシのエモーショナルポイントで進めていくのでご容赦を!
「美人画?ならば歌麿でしょ!」と即答の田村さん。
さっそく中尾書店からいくつかピックアップしてくださいました。
歌麿の美人画-1
「蔦屋重三郎が発掘し、その才を育てたのが喜多川歌麿(きたがわうたまろ)です」と田村さんが紹介する1枚の美人画。
「いやはや、なんとも曲のあるしなやかな美しさですね」とニッコリ。
大きく結われた島田髷(しまだまげ)。その髪の線に連動するような着物の縞模様。線と線の、人工的な「人の手が加わった」美を上下に配し、間に挟まるのは滑らかな曲線を描く女性の顔(かんばせ)。
眉と鼻筋の柔和さ、チョボンと載る口は「あ」と言っているかのような半開きに、眺めるだけで何も凝視しない目の動きも、額やサイドにピシリとなでつけられる髪も。
ひとりの女性を描く際に、ここまで硬軟を交差させる、観ているこちらの気持ちもソワソワと落ち着かない。「指のなだらかさと、キセルの直線にも、硬軟が現れます」と田村さんもしんみりです。
歌麿の美人画-2
「こちらも、やわらかで麗しい美人画です」と、歌麿をもう1枚。
先ほどのキセル姐さんとは異なり、だいぶんリラックスなひと時をすごすご様子。「名物おせんべえ」の袋を持って、ゆるく崩れた着物は淡い配色。
ゆるりとした手の動きに、しっかりと結われる島田髷(しまだまげ)にはかんざしを幾重にも付けて、額の生え際のなんとも流麗なこと。キセル姐さんよりも、少しだけ弛緩した表情のおせんべい姐さん。目や鼻、口の形だけで、微妙な表情の違いが浮き上がってきます。
ユニーク!…東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の大首絵
歌麿の柔らかな世界を堪能した後は…なんと写楽の大首絵が登場。
その本名も出生地も長きにわたって「不明」で、活動期間はわずか10ケ月。正体を追うようにあらゆる研究が進められてきた謎の浮世絵師、写楽。「実はね、その写楽〈蔦屋重三郎の娘だった説〉もあるんです」と教えてくれた田村さん。これはかなり驚きの説!
でも、常に新しい表現を追い求めてきたツタジュウが、自身の子どもに新しい試みをさせた・・・という仮説はとってもロマンがありますね!
そんな新説を頭に置いてから眺めてみると…なんともチャーミングな彼女。
美人なお人形ではなく、活き活きと感情を宿したひとりの女形。かんざしも櫛も立派な結いからこぼれる後れ毛や、人間味ある鼻筋に「ニッ」と笑う口元。
思わず「かっわいいなぁ!」と感嘆するキュートさ。
さらに写楽をもうひとつ。こちらは役者絵です。この役者は「二代目 坂東三津五郎」で演じているのは「かたき討ち」の名作である石井源蔵。えっと、現代でいうと…大人気イケメン俳優がカッコいいヒーローを演じているというシーンなのですが、なんだかユニークですよね!
ずんぐりとした鼻、真一文字の口、キョロっと睨みを効かせる眼。どこか牧歌的な太めの眉毛も。カッコいいヒーローを演じているイケメン俳優の懸命さが伝わってくるかのような表現。そう、彼も「人」なんです。ヒーローを演じるイケメン俳優すらも演じている「生身の人」なのですね。
みなさんはどの一枚が気に入りましたか?
中尾書店ではこれに限らず、さまざまな浮世絵をお持ちです。ご自身のコレクションに加えてみるのも楽しい!ぜひとも足を運んでみてください。
【手摺木版画/復刻版】
◆神奈川沖浪裏/8,000円
◆凱風快晴/6,000円
◆山下白雨/6,000円
◆写楽 役者絵/2,500円
【印刷】
◆歌麿 美人画/各850円
◆写楽 大首絵/850円
※上記金額は税込価格です。
※紹介商品は一例です。在庫は流動しますのでご了承ください。