「これからの流れはブランド先行じゃない」
その預言を裏付ける、珠玉の6コーデ
心斎橋唯一、アジアストリートファッション

HUB LUB

剝き出しのストリート感覚

「これからの流れはブランド先行じゃない、ユーザー先導型だ」。前回の記事でそう預言した宮本幸生氏。心斎橋筋商店街に唯一のアジアストリートファッションを展開するHUB LUBの代表であり、店舗管理者であり、バイヤーであり、コーディネーターである。MODITEC（中国）やA FEW GOOD KIDS（台湾）といったファン垂涎もののアイテムの他、Paragraph、What it isn’t、muah muah、GRAVER OF ANAHEIM、RMTCRW、NERDY、2PLAN……などなど、宮本氏の先見の明に適ったアイテムが並ぶ店内。だが、宮本氏が上陸させたいものは「アイテムそのもの」ではない。

まだ「形（ブランド／ライセンス）」にもなっていない「服」がユーザーによって一隅を照らされ、インフルエンサーによって瞬発的に指数関数的に爆発する。その「剝き出しのストリート感覚」こそ、宮本氏が日本に根付かせたいマーケットスタイル。つまり、カルチャー×マーケットの醸成が狙いとなっている。

アジアの最前線がハブとなるこの空間。人気の高いブランドや知名度のあるブランドを並べるだけでなく、今は＜無名＞の＜名作＞も多く扱っている。「それがセレクトショップとしての使命です。HUB LUBのアンテナやセンスを担保とせずに、ただ商品を並べるだけでは、HUB LUBとして意味がありませんから」と笑う宮本氏。

取り扱う商品は、今や韓国、中国、台湾、ベトナムとアジア地域を拡大中。各国の新人デザイナーが創り上げたプロダクトを積極的にセレクトするのも実に宮本氏らしい。極論を書けば、売りたいのは服ではなく、その背景までひっくるめたカルチャーそのもの。すなわち、それ自体がHUB LUBのコンセプトテーマとなっている。今回ご紹介する6コーデはまさにそれを象徴するものとなっていた。

コーデA『PUNK』／オールブラックの妙味

トップス／F.V.V.O（中国） ×　ボトム／セレクト（韓国）

トップスのF.V.V.O（Free World Order）は広州発の新鋭ブランド。日本ではごく限られたショップでのみの取り扱い。トレンドとクラシックの統合に挑む意欲的デザインが話題。SALUTE（香港）とのコラボも展開。パンツはセレクト（韓国）。ダメージデザインにファスナーを設え、「ダメージの加工」をある種のアイロニーに煽るかのような遊び心。オールブラックの刺し色を「赤」としたパンクスタイル。

トップス／セレクト（韓国） ×　ボトム／ F.V.V.O（中国）

オールブラックでありながら、マテリアルの異なりとトーングラデーションで弾みをつけるワンコーデ。 F.V.V.Oのトップスとセレクトのパンツにダメージを連動。シャツと一体となったアクセが妙味。特筆はアームウォーマー（セレクト／韓国）で、ワントーンコーデのキィアイテムとして効果的。キャップは。 F.V.V.Oで「赤」のラインをガールスタイル側と連動。スタイルはパンク、それでいてマテリアルとトーンのグラデーション配置はハイエンドを彷彿とさせる小憎い技巧。

コーデB『Y2K』／白＆黒のバランス

トップス／MEDM（中国） ×　ボトム／セレクト（韓国）

トップスのMEDM（MR.ENJOY DA MONEY）は中国発の新鋭ブランドで、ラップ集団「HIGTER BROTHERS」のKnow Knowが設立。相方はA FEW GOOD KIDSのMasiwei。 MEDMは日本ではごく限られたショップでのみの取り扱い。トップスがスポーツテイストな袖切り替えデザイン、対するスカートはオールドスクールなワンウェイプリーツミニ。ダメージレッグウォーマー（セレクト／韓国）で足元ボリュームを配置。

トップス／セレクト（韓国） ×　ボトム／セレクト（韓国）

アクセも刺し色も一切無し。「主役はセットアップ」を前面に主張するワンコーデ。かなりのワイドサイズに仕上げながら、トップスのショート丈がシルエットを引き締める。ショート丈シルエットを弾ませるのがレイヤーとなるインナーのダメージデザイン（セレクト／韓国）。トップス、ボトム共にサイドラインデザインが巧妙で、スポーツ意匠を逆手に取ったモダンイメージすら彷彿とさせる。デザイナーの意図を感じ取ると…「主役はセットアップ」は必然の着地。

コーデC『マテリアル』／マテリアルの勝利

トップス／セレクト（韓国）

メンズサイズのトップスをオールインワンで。黒ワントーンに映えるのはウィスパー＆ハスキーなスプレーデザイン。足元のボリュームはタイトウォーマーで引き締めて全体バランスを考慮。ここまでビッグシルエットを打ち出してもしっかりとニュアンスが漂う、かなり稀有なプロダクト。韓国の新進気鋭デザイナーの手腕。

トップス／F.V.V.O（中国） ×　ボトム／セレクト（韓国）

F.V.V.OのトップスはロンT、しかも「白」。パンキッシュなデザインをワンマーク配し（バックには“Whats scarier than being who you really are？”のロゴ）、同じくF.V.V.Oのキャップからハーフボトムへと「 I 」ラインに黒を配置。ハーフボトムは韓国のセレクトで、細タックを贅沢に設えたレザー風。F.V.V.Oの魅力をセレクトアイテムで引き出す、試みに満ちたコーデ。

既に中華圏でカルト的人気を誇り、日本ではこれから認知が拡大していく「F.V.V.O」や「MEDM」。それらと同等に、いや、それ以上の力を持ってコーデに据え置くセレクト（韓国）アイテム。今回のコーデはまさに、アジアストリートファッションの最前線を映し出すようなもの。言葉を尽くしても語り足りないこの実感、是非とも店頭で体感してみて！

gallery.